変革を求めた青森県民、保守分裂の知事選で圧勝したのは自民色を薄めた元市長だった
話はさらに複雑になる。1月9日、青森市長の職にあった小野寺氏が「三村知事が引退した場合は」という条件付きで、知事選への立候補を考えていると明らかにした。小野寺氏は元々、県政界の大御所である大島理森元衆院議長が青森市長にするとして連れてきた人物だ。三村氏のことは「政治の師」と仰ぐじっこんの仲でもあり、一部には「小野寺氏こそが三村知事の後継者だ」との見方もあった。 なぜ小野寺氏はこのタイミングで事実上の出馬表明をしたのか。関係者は「宮下氏に対する強烈なライバル心」と分析する。2人はいずれも若手市長で、青森の将来を担うと期待されている。小野寺氏にしたら、目立っている宮下氏には負けられないというわけだ。 そして両氏のライバル関係は自民に飛び火する。県連幹部が出馬を打診していた官僚が、2市長の様子を見て「保守分裂は望んでいない」と要請を断った。無風の選挙を望んでいた自民の計画は水の泡となり、幹部は「わんぱく坊主の宮下のせいでおかしくなった」と不満を隠さなかった。
▽波紋呼んだ「誓約書」 宮下、小野寺両氏はいずれも自民に知事選での推薦を求めた。官僚擁立をあきらめた津島氏や江渡氏はどちらを選ぶか迫られたが、腹の中にあったのは小野寺氏だ。関係者によると、大きな理由は2人のキャラクターの違い。宮下氏は「中央政界に盾突いて何をするか分からない」と破天荒型の評価がもっぱらで、国会議員や三村知事と良好な関係を保ってきた小野寺氏の方が受け入れやすいのは間違いなかった。 1月21日、選考委は両氏に「党本部、県連の決定後は、党推薦候補の当選に向け最大限の協力をする」という内容の「誓約書」への署名を求めた。宮下氏にしてみれば、県連が小野寺氏を選んだ場合は立候補を辞退するよう求められたに等しい内容で、当然署名を拒否した。後に誓約書について「民主主義の根幹を揺るがす暴挙」と批判している。逆に小野寺氏は署名し、2人の対立は決定的となった。 ▽自民の迷走、推薦方針を撤回し分裂