「公共性を完全に無視した愚行」と抗議、広告が縮小、撤去の報道も。京急・サントリー・地元商店街の施策「京急蒲タコハイ駅」に批判の声も、モヤモヤが否めない理由とは?
■「うまい落としどころ」はなかったのか こうした観点から見ると、「あっさり下げてしまったな」との印象は拭えない。もちろん最初にも書いた通り、アルコールが与える影響を肯定しているわけではない。ただ、それだけに「うまい落としどころはなかったのか」と感じるのだ。 申し入れ書で言及されているように、確かに酒類広告には自主規制がある。ただ、複数の酒類業界団体が共同で定めた「酒類の広告・宣伝及び酒類容器の表示に関する自主基準」をみると、公共交通機関において行わない広告としては、車体広告、車内独占広告、自動改札ステッカー広告、階段へのステッカー広告(駅改札内)、柱巻き広告(駅改札内)が挙げられており、この条文を忠実にとらえると、「駅名看板」の扱いは難しいところだ。
だからこそ書面では「これ以外にもさまざまな問題事例がある」と指摘し、ビール酒造組合や、その加盟社であるサントリーに「交通広告の全面自粛を含む抜本的な対策を求める要望書」を提出した過去に触れ、その要望書が抗議の趣旨だとしている。 今回のケースでは、最終的に看板撤去という着地点になったが、「広告出稿を下げれば、それでおしまい」ではない。トラブル発生時の対応には、必ず「なぜそうしたのか」の理由説明が、セットで求められる。
看板撤去によって「問題だ」と考える人々に対しては、一定程度の答えが出されたが、反対に「気にしすぎではないか」と感じる向きには現状、納得できる回答は示されていない。どこかの街で「第2のタコハイ駅騒動」が起きないためにも、論理的かつ客観的な対応が必要となるだろう。
城戸 譲 :ネットメディア研究家・コラムニスト・炎上ウォッチャー