「公共性を完全に無視した愚行」と抗議、広告が縮小、撤去の報道も。京急・サントリー・地元商店街の施策「京急蒲タコハイ駅」に批判の声も、モヤモヤが否めない理由とは?
ギャグとして成立しているかは別にして、今回の「蒲タコハイ駅」を聞いたとき、「また始めたのね」と感じたのは筆者だけではないだろう。 当然ながら、これらの駅名は、正式名称の改称で実現したわけではない。ただの広告出稿でなく、「副駅名への期間限定ネーミングライツ導入」として捉えると、運賃ばかりに頼れない鉄道会社においては、貴重な収益源にもなる。 実際に、ローカル鉄道においては、こうした収入を柱にしているケースもある。
また、駅ホームを「酒場化」する試みにも前例がある。味の素冷凍食品は2017年、JR両国駅でグルメイベント「ギョーザステーション」を開催した。ふだん使われていない「幻のホーム」で、客みずからがギョーザを焼きながら、ビールなどのドリンクを楽しめる内容で、コロナ禍の休止期間を経て、今年ひさびさに開催された人気イベントだ。こちらは、あくまで主役がギョーザであり、合わせる飲み物がアルコールとは限らなかったが、どこか今回の施策との近さを感じる。
そして、今回のイベントで、もっとも大きいポイントと感じるのは「地元商店会とのコラボ」だったことだ。地域を巻き込むことで、もはや営利企業の販促施策にとどまらず、「町おこし」の一環になっていたことは、しっかり考慮する必要があるだろう。 駅を起点にした「飲み歩き」イベントは、いまや珍しくない。筆者の地元である東京都杉並区においても、中央線沿線の立ち飲みやバー、居酒屋が参加した企画は、毎シーズンのように、各駅周辺で行われている。
本件に立ち返ると、きっかけは京急やサントリーのような有名企業発信だとしても、それに地元の商店が呼応した事実は大きい。公式サイトによると、大田区商店街連合会は、会員数7500店舗を有する。京急蒲田エリアのみならず、大田区全体に広がる地元団体が本腰を入れていたことは、少なくとも地域活性化の観点では、十分に評価するべきだろう(なお、先述の申し入れ書は、宛先が京急とサントリーで、商店街連合会は含まれていない)。