日本の防犯は時代遅れ! 犯罪から子どもを守るため、海外に学ぶ「危険な場所」の見分け方
子どもの防犯といえば「あやしい人に気をつけなさい」と「いかのおすし(※)」。けれどそれでは子どもを守れないと言われたらどうしますか? 「犯罪者と会った場合の対処法を子どもに教えるのは、車にぶつかったときの受け身の取り方を教えるようなもの。本来ならば、車にぶつからないように(=犯罪者に遭遇しないように)どうしたらよいのかを教えるのがリスク・マネジメントです」と警鐘を鳴らす犯罪学教授の小宮信夫先生に、「我が子を守るために親子で身につけたい力」について教えてもらいました。 【前回はこちら】日本の防犯では子どもを守り切れない!? 世界の常識で「不審者」よりも避けるべきとされている“場所”とは ※「いかのおすし」とは警視庁考案による防犯標語で、子どもが知らない人に声をかけられたときに、被害にあわないようにするための5つの行動の頭文字をまとめたもの。 「行かない(知らない人について行かない)」「乗らない(知らない人の車に乗らない)」「大声を出す(助けて!と大きな声を出そう・防犯ブザーを鳴らそう)」「すぐにげる(大人のいる方にすぐにげる)」「知らせる(どんな人が何をしたのか家の人に知らせる)」の5つで「いかのおすし」。
日本の防犯は時代遅れ!「不審者」に気をつけているのは日本だけ
前回は、犯罪を起こす「人」を見分けるのは大人でもむずかしいので、危ない「景色(場所)」で判断しましょうという話をしました。犯罪の動機を持っている人も、犯罪を起こすチャンスがなければ実行には移せません。そのチャンス(機会)をなくして、犯罪を減らそうという考え方を「犯罪機会論」と言います。これは世界では常識となっている考え方ですが、日本ではまだ浸透していません。 犯罪をする「機会」というのは、犯罪が成功しそうな状況のことです。その状況を長年分析して出た答えが、「犯罪者は場所を選んで犯行に及ぶ」「その場所とは、入りやすく・見えにくい場所である」ということです。 50年ほど前までは海外でも、犯罪者の動機(=人)に注目していました。しかし防犯においては、「人」よりも「場所」に注目する方が効率的であったため、いまでは世界中で、防犯では「場所」に、犯罪者の改善更生においては「人(動機)」にフォーカスするようになっています。 日本では防犯と更生のどちらも「人」に注目しているため、まだ犯罪者がいない段階で「不審者」という曖昧な言葉を使わざるを得なくなってしまいました。 「不審者」や「あやしい人」という定義のむずかしい言葉は、防犯の妨げになるだけでなく、面識のない人を不信感を持って見ることや差別意識につながります。こんな言葉を使っているのは日本だけ。日本は防犯においてガラパゴス状態で、残念ながら後進国なのです。