中国株は景気懸念から下落 ~アジア・マーケット動向の振り返り【解説:三井住友DSアセットマネジメント】
中国<三中全会>
⇒三中全会を開催 ◆7月中旬に開催 中国共産党は7月15~18日に第20期中央委員会第3回全体会議(三中全会)を開催した。三中全会は党5年サイクルにおける改革の方針を示す会議であり、従来は党大会の翌年に開催されていたが、今回は2年後に開催された。今年は建国75周年であり、5年後の建国80周年までに今回の改革を完成させると決定している。一連の汚職事件に関与した人物への党としての決定が遅れたことに加えて、党の重要会議を建国周年(5の倍数)に開催したいという思惑もあったと推察できる。 ◆高付加価値産業の支援&税制改革 中国経済が直面している深刻な構造問題は不動産市況の低迷であるが、不動産に関しては住宅購入制限の縮小など一般論にとどまった。一方、科学技術の発展促進、そのための人材育成など高付加価値産業を支援する姿勢が明確になった。半導体などハイテク産業はその代表例であろう。少子高齢化が進む中国社会では人口減少が潜在成長率の低下をもたらすため、これに歯止めをかけるには高付加価値産業の発展は理に適った判断である。 また、地方政府の債務問題が、財源不足に起因している点に党中央委員会が注目し、地方政府の財源強化を決定した。同時に地方政府の隠れた債務(融資平台)も含めて地方債務の監視システムを確立することも決定した。 ◆独特な社会体制から様々な限界も 中国は党が領導する国であり、党が国有企業のステークホルダーである限り、国有企業の優位性は揺るがない。その結果、党が民間企業を活性化しようとしても、民間企業が相対的に劣後する状況は更に進展しそうだ。都市部固定資産投資では、国有企業の上振れ、民間企業の下振れが明確だ。また、社会主義市場経済においては、市場メカニズムの有用性を認識しながらも同時に「市場の失敗」を前提に、当局による管理強化を正当化しやすい。国有企業の強化を目指す以上、市場メカニズムとの不整合が発生しやすく、起業家精神が以前よりも発揮しにくくなりそうだ。 石井 康之 三井住友DSアセットマネジメント株式会社 チーフリサーチストラテジスト ※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。 ※上記の見通しは当資料作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。今後、予告なく変更する場合があります。 ※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『中国株は景気懸念から下落 ~アジア・マーケット動向の振り返り【解説:三井住友DSアセットマネジメント】』を参照)。
石井 康之,三井住友DSアセットマネジメント株式会社
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