凍結後30年経っても蘇生・繁殖 「最強生物」クマムシの秘密とは?
世の中の役に立つ研究成果は、膨大な数の基礎研究あってのもの
「クマムシが30年以上経って蘇生した」というニュースのインパクトに、日本のみならず海外メディアも注目。イギリスのBBC、米国のウォール・ストリート・ジャーナル、同ハフィントンポストなど、約20か国のメディアが取り上げた。 今回の研究成果は、たとえば老化の予防など、医療や産業といった分野の発展にすぐさま結びつくものではないが、「世の中の役に立つ研究成果は、膨大な数の基礎研究あってのものと理解していますし、役に立つことばかりを追求すると、研究は狭くなってしまいます」と、辻本氏は基礎研究の重要性を強調する。 クマムシについては、まだまだ研究したいことがあるという。今回は蘇生したクマムシの数が少ないため、蘇生して繁殖した、という事実以上のことは言うことができない。たとえば、クマムシはどういう仕組みで蘇生したのか、どのような状態のクマムシなら回復率が高いのかなどは、未解明のままだ。研究所の冷凍庫にはまだ10~20年前の試料も眠っており、それらを使ってより多くの蘇生したクマムシを調べられれば、研究をさらに前進させることができるはずだ。 「一度研究すると、調べたいことがどんどん出てきちゃいますね」と笑いつつ、辻本氏は今後のクマムシ研究に意欲を見せた。 (取材・文 具志堅浩二)