「マイナ保険証」への強制的な一本化は「憲法違反」である 政府は法律を改正して出直すべきだ 古賀茂明
■マイナ保険証利用率上昇は「国民の勘違い」 しかし、そのやり方は、事実上の強制だ。 一方、「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(個人番号法)」の第16条の2第1項では、マイナンバーカードの取得は個人の申請によるとされている(任意取得・申請主義の原則)。つまり、個人の自由選択ということだ。 マイナ保険証への一本化は、マイナンバーカードの取得さえ義務ではないというこの法律の立て付けと全く矛盾している。国民には政府のやり方が、非常に強権的に映った。マイナンバーカードの取得は義務ではありませんと言っていたのに、あれは嘘だったのかという不信と反発の声が急速に広まる結果となったのだ。 これを放置すれば大混乱になるので、政府はまず、仕組みの変更後も従来の保険証は最大1年有効とするとともに、マイナ保険証を持たない人には申請すれば有効期間最長1年の「資格確認書」が交付されるという方針にせざるを得なくなった。政府としては大きな譲歩のつもりだったかもしれない。 だが、それでもマイナ保険証への逆風は止まらなかった。 政府はさらに譲歩し、資格確認書は申請しなくても交付されることとし、さらにその有効期限を最長5年に延長した。 それでもまだ、マイナ保険証への批判はかなり強いままだ。 政府関係者の中には、マイナンバーカードもマイナ保険証も絶対に必要で、しかもメリットがいろいろあるのに、それを理解できない、あるいは時代の流れについていけない馬鹿な国民が理不尽な反対をしていると考えている者もいるようだ。 現に、保険証新規発行停止が始まって以降、急速にマイナ保険証の登録者が増加し、12月2日から1週間のマイナ保険証利用率は28.3%となったが、ここまで急上昇したのは、ようやくマイナ保険証のメリットに関する理解が急速に高まったからだと政府関係者は自画自賛している。 しかし、利用率が急上昇したのは、マイナ保険証を使わなければ保険診療を受けられないと勘違いした人が利用したケースが多く含まれていることが大きな理由であると見る関係者も多い。 実は、マイナ保険証一本化に対する抵抗姿勢は、法制度的に考えると極めて自然なことだ。なぜなら、政府のマイナンバーカード一本化が「強制」されれば、憲法違反の疑いが濃厚だからだ。