「マイナ保険証」への強制的な一本化は「憲法違反」である 政府は法律を改正して出直すべきだ 古賀茂明
マイナンバーカードと健康保険証を一体化した「マイナ保険証」への移行に伴い、12月2日から従来の保険証は新規発行されなくなった。 【図表】マイナンバーカードで受けられるメリットはこちら 10月末現在でマイナンバーカード保有者は75.7%で、マイナ保険証の利用登録済みの人は、そのうちの82.0%。つまり人口の6割強しかいなかった。しかも、マイナ保険証を利用した人となるとさらに比率は下がり、10月に医療機関のオンライン確認でマイナ保険証が利用された率は15.7%、11月になっても18.5%と低いままだった。 政府があれだけ旗を振ってこの数字だったのだから、いかにマイナ保険証が不人気だったかがわかる。 マイナ保険証を持たない人や持っていても使わない人にはさまざまな事情がある。 マイナンバーカードそのものに反対でカードを持っていない人、マイナ保険証に反対でマイナ保険証の登録を行わない人、手続きが面倒だったりよくわからなかったりして登録しない人、元々取得したくはなかったがマイナポイントをもらえるので登録したが使わない人、家族に登録してもらったが使い方がわからず使えない人、病院でトラブルがあるのを恐れて使わない人、自分の診療情報を病院に見られることを恐れて使わない人などだ。 マイナンバーカード取得そのものが義務ではなく、マイナ保険証の登録ももちろん義務ではない。したがって、これらの事情のある人がマイナ保険証の登録を行わず、あるいは、登録しても使わないことは全く自由のはずである。 しかし、行政の効率化などを目的に、マイナンバーカードの普及を早く進めて国民全員に取得させたいと考えていた政府は、マイナ保険証を利用してマイナンバーカードを無理やり取得させる方法を思いついた。それが、従来の保険証を廃止して、マイナ保険証に一本化するというやり方だ。 2022年10月に河野太郎デジタル相(当時)が発表したのだが、普及を目的にしたこの方針が完全な逆効果になってしまった。 従来の保険証を廃止すれば、国民はマイナ保険証の登録をせざるを得ない。しなければ、被保険者であることを証明する手段がなく、保険診療を受けられなくなるからだ。保険診療が受けられなくなるのは、普通の人にとっては大きな損失、リスクになる。したがって、マイナ保険証の登録を拒否するのは極めて困難だ。政府はそれを知って強行しようとした。