自動車評論家の国沢光宏が買ったアガリのクルマ! 内燃エンジンのスポーツカーと泥んこOKの軽自動車、これは最高の組み合わせです!
あなたの終のクルマはなんですか?
別荘のある八丈島で使うために購入したダイハツ・ハイゼット・デッキバンと最後のエンジン車として手に入れた日産フェアレディZ。オトコ、国沢これらをアガリのクルマにしたい! 【写真23枚】自動車評論家の国沢光宏さんが終のクルマとして買ったスポーツカーと軽自動車の写真はこちら! ◆八丈島で遊ぶ 私は「最後のクルマとしてハイゼットのデッキバンを選びたい」と10年前から書いてきた。イメージとしちゃ70歳くらいでしょうね、と思っていた次第。しかし縁あって八丈島に釣り&海遊びの小屋を確保出来ることになった。釣りをしたことのある人なら御存じの通り、行きはヨイヨイ帰りは、というヤツで、釣ったサカナも撒き餌に使ったコマセもステキなニオイを放つ。 はたまた海に潜るので(八丈島は陸からエントリー出来るポイントが多い)、終了後ウエットスーツやフィン、マスクなど濡れたまんま載せたい。開放荷台を持つデッキバンなら、臭いものだって、海水で濡れたものだって放り込んでおけばOK。それでいて大人4人が乗れる。デッキバンほど八丈島の生活に役立つクルマはない。そんなことから66歳で買ってしまった。 もちろんペダルの踏み間違いの心配をしないでいいマニュアルです。驚くことに乗ってみると超楽しかったりして! 920kgの車体に53psは、スペックからすれば全く期待出来ない。けれど5段マニュアルのギアレシオが全体的に低いため、高回転まで引っ張ってやると80km/hくらいまでならキビキビ走ってくれる。しかもフロント・エンジンのリア駆動。FRの挙動を見せます。 そもそもNAエンジンのマニュアルが面白い! ギアチェンジを上手に行えば全くシフトショック無し。少しミスるとギクシャクする。特に4速と3速のギアが離れているため、シフトダウンでピッタリ回転を合わせるのは相当なテクニックを必要とする。アップダウンやタイトコーナーの多い八丈島だと頻繁にギアチェンジしなければならず、それだけでスポーツ・ドライビングだったりして。 ◆気持ちいい3気筒 八丈島でMTのデッキバンに乗っていると「運転の楽しさは絶対的な速度やコーナリングスピードではありませんな!」と深く思う。速度や勾配によって適切なギアを選び、トルクバンドを使って走らせた時の喜びは(縦置き3気筒が案外気持ちよい音と振動を出す)、高性能スポーツカーで箱根のワインディング・ロードを走っているときと大差なし。 いや、絶対的な速度が低いため安全にドライビングを楽しめる。さらに! このところアメリカで軽商用車が人気! 先日アラスカに行った際、ミニキャブに乗っていた人に聞いてみたら「このサイズがいいのよ。気軽に乗れるし軽くて小さいからキビキビ走る。毎日乗ってるよ」。日本だと軽自動車は安価な移動手段ながら、クルマとしても十分に魅力的だと思う。 もはや手放せそうにありません。次期型のハイゼットにデッキバン仕様が存在しなかったら(存在してもマニュアル車が無ければ)、現行モデルの最終ロットを購入する予定でいる。10年乗れば免許返納の時期。文字通り最後のクルマになります。同世代の皆さんもぜひオーラスのクルマのリストに入れることを強く推奨しておく。自動ブレーキに代表されるADASも付いてます。 ◆最後の純エンジン車 隣のクルマは「最後の純エンジン車」として購入した。ボクスターも考えたが、いかんせん入手難。というか、購入出来ない。加えて相場もうなぎ上り。だったら子供の頃から親しんだ日本車でしょう。GR86やBRZ、ロードスター、GRヤリスなど候補にしたが、ヨメさんから「私も最後のクルマにしたい。フェアレディZのマニュアルがいい」。かくして我が家にやってきた。 説明するまでもなくフェアレディZというモデル、スポーツカーのカッコをした実用車として生まれた。1969年にアメリカで発表されるや、性能の割に安価だったため売れまくる。そのDNAをしっかり引き継いでおり、購入したベースグレードは、ナビなど必要な装備が全て標準でいながら539万9800円。搭載されるのは405psの3リッターV6ツインターボだ。 1馬力あたり1万3300円。この手のクルマとして考えたら世界一安いと言っていいだろう。ほとんど期待しないで買ったのだけれど、予想のはるか上を行く楽しさだった。とにかくパワフル! 速度リミッターをカットした試験車は0~400mを12秒台で走り、最高速280km/hを超える。低い回転域から太いトルクを出すため、1段飛ばしのシフトアップでストレス無し。 といった意味では気難しさ皆無の高性能クーペだと思う。されどいかんせん基本設計が古いし、基本となるボディ骨格も体力不足。アメリカではクルマの売れ行きを左右する「スキッドパッドの横G」を出すべく太いタイヤを履いているため、シャシが負けている感じ。私のように気難しいクルマ好きだと気になってしまう。そんなことから少しばかり手を加えたいと考えている。 ◆初代Zのラリー仕様 具体的には初代フェアレディZのラリー仕様だったりして。サファリ・ラリーで優勝しているし、FR車は不利と言われるモンテカルロ・ラリーも3位に入り存在感を見せている。先日、ポルシェ911ダカールに試乗した。ラリーレイドに出場した953を意識したモデルである。乗ると標準の911より挙動がマイルドで疲れず、シート高も上がっているため乗り降りで「よいしょ!」とならない。 フェアレディZもタイヤ・サイズを少し補足して車高アップさせたらカッコいいし、乗りやすくなりそう。実はそのためにボディ・カラーもオレンジを選んだ。ボンネットを黒くするか迷っているところ。オフロード・パターンのタイヤを履かせ、マッド・フラップ付け、補助灯なんかも付けると気分が出てくる。考えるだけでワクワクしてくる。やはりクルマいじりは楽しい! ◆孫にプレゼント 10年くらい乗り、現在11歳を筆頭に6人いる孫の中で一番のクルマ好きにプレゼントするつもり。2050年のカーボン・ニュートラルまで26年ある。10年後にバトンタッチしたって16年乗れるだろう。複雑な部品を使ってないのも好ましい。読者諸兄も、長いスパンで最後の純エンジン車を選ぶことをすすめたい。 ちなみにマニュアルは電動化車両になると絶滅する。マニュアル免許取得したって乗るクルマ無い? というか教習車はどうするんだろう。そういったことまで想像を巡らせられるマニュアルって楽しい。どの孫がオレンジ色のフェアレディZに乗るんだろうというあたりもワクワクします。天国にいるジイサンが買ったクルマという設定、クルマ好き冥利に尽きる。 文=国沢光宏 写真=茂呂幸正 (ENGINE2024年12月号)
ENGINE編集部
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