元気な母が突然倒れた。入院中認知症が進み… 母親の介護に奔走するリアルな日常をつづったコミックエッセイ【書評】
寝たきりの状態だったあぽりさんの母親だが、リハビリで歩けるくらいまで回復して退院にいたる。しかし、リハビリで身体の調子が良くなっても認知症が治るわけではない。退院後も「あぽりさんの母親は認知症なんだ」と改めて思い知らされるエピソードが複数でてくる。あぽりさんの母親は、そもそも自分が寝たきりになっていたこと自体を忘れている。お気に入りの先生や理学療法士さんのことも、あぽりさんが介護したことも、全て覚えていないのだ。 「忘れられてしまう」というのは、認知症患者の介護をするうえで起こる辛くて切ないことのひとつだろう。現在身内の介護をしている方は「一生懸命介護しても忘れられてしまい、切なくて苦しい思いをしているのは自分だけではないんだ」と少し心が楽になるかもしれない。
子育ても介護も、身の回りの世話をしなければならないという部分はよく似ている。だが未来に向かっている子育てと異なり、現状維持か悪化の2択で人生の終わりに向かっている介護は希望を抱くのが難しい。たとえ今はまだ介護に向き合っていなくとも、不安を抱える人は少なくないだろう。 そんな人にこそ本作はおすすめだ。あぽりさんの母親の症状や、それと向き合うあぽりさんの気持ちがリアルに描かれているので、同じような悩みを抱えているのは自分だけではないと少し心が軽くなるかもしれない。そして、本作ではそんなあぽりさんを助けてくれた介護のプロの存在も紹介している。自分はひとりではない、どこかに頼っていいのだと知ることができるだろう。ぜひ本作を手に取って、介護をするときの参考にしてほしい。