古いのに最新「EGR技術」によってエンジンは進化する
さて、低燃費にするためにはこれら全てをシラミ潰しにしていくのだが、ことEGRに関する限り、問題になるのはこの中で最初に挙げた「ポンピングロス」だ。前述のように少しでもスロットルバルブが閉じている間はポンピングロスが発生するから、できれば常に全開にしたい。ただ、ガソリンエンジンは14.7:1の理論空燃比を外れると三元触媒が働かないので排気ガスが汚くなるし、もっとひどくなれば燃焼できずに止まってしまう。かといって全開時の空気量に合わせて燃料を吹いたら、常にフルパワーというとんでもないエンジンになってしまうのだ。 だから、これまではポンピングロスは仕方のないものとして諦めてきたのだ。しかし、燃焼を左右するのは空気中の酸素だと考えると脈が出てくる。出したいパワーの分だけガソリンを噴射し、それに見合った分だけ空気を吸う。それ以上は、酸素を含まない排気ガスを混ぜてやれば、パワーの調整をしつつポンピングロスを減らせる。排気ガスは吸気量にのみ影響を与え、酸素量に影響を与えないからだ。 もちろん燃焼のことを考えれば、排気ガスをいくら混ぜても大丈夫ということはない。排ガスを混ぜる量はガソリンエンジンでせいぜい20%だ(ディーゼルは50%)。しかし少しでも余分にスロットルを開けられれば、その分ポンピングロスは減る。こんな器用なことができるようになった背景には、電子制御によって燃料噴射とスロットルバルブを燃焼状態に合わせて最適制御できるようになったことが大きい。
さて、ポンピングロスを減らすために、吸気の内の排気ガス量を増やそうとすると困ることが一つある。それは排気ガスが熱いので、空気の充填効率が落ちることと、ノッキングが起こりやすくなることだ。そこで排気をインタークラーのような仕掛けで冷やしてやることにした。こうして排気を冷やしてやれば充填効率が上がり、ノッキングも起きにくくなる。これはクールドEGRと呼ばれる現在のトレンド技術である。 ちなみに、ディーゼルの場合は燃焼のシステムが異なり、空気はいくら吸ってもOKだ。ただの空気を圧縮して高温になったところに点火したいタイミングで燃料を噴射して燃やす。空燃比と関係なく燃やせるので、エンジンには常に最大吸気量を吸い込ませ、燃料だけ調整すれば出力の調整ができる。だからポンピングロスが発生しないのだ。