古いのに最新「EGR技術」によってエンジンは進化する
各メーカーの排ガス対策は、様々な試行錯誤の結果、結局はEGRと併用して三元触媒を使う方法に落ち着いたのである。三元触媒はCOとHCに酸素を渡し、NOxから酸素を奪う救いの神だ。ただ触媒が酸素を持っていられる量には限りがあるので、NOxばっかり来るともうお腹いっぱいで酸素を受け取れなくなってしまうし、COとHCばっかり来ると手持ちの酸素が切れてしまう。 だからもらうのと渡すのが良い具合にバランスするためには空気とガソリンの化学式が美しく成立する14.7:1の理論空燃比に正確に保つ必要があり、そのために排気ガスの残留酸素量をチェックして、インジェクターのガソリン噴射量を正確にコントロールすることが絶対だ。
こうしてEGRと三元触媒を併用することによって、日本ではいち早く低公害エンジンが普及したのだ。触媒を使わないホンダのCVCCやスバルのSEEC-Tなどの例外技術もあって、むしろ三元触媒より早くデビューしたのだが、いまではどちらも消え去った。これが冒頭に書いた(1)再燃焼による排気ガス浄化の話である。 このEGRの役割は1986年に筆者が3級自動車整備士の資格を取った時に教えられたことで、まあ今となってはEGRの割とどうでもいい部分でしかない。そんなどうでも良い技術が21世紀の今、どうして最先端技術になっているかは(2)と(3)によるものだ。
(2)吸気負荷の軽減
燃費の良いエンジンを作ろうすると、効率アップを阻害しているロスが4つある。 ■ポンピングロス ポンピングロスとはスロットルバルブによって吸気口が絞られていることで生じるロスだ。例えば細いストローを口にくわえて、息をしようとすると一生懸命吸わなくてはならない。全開の時はいいのだが、スロットルバルブを閉じているとエンジンは空気を吸い込むのにパワーを使ってしまう。これをポンピングロスと言う。サーキットならいざ知らず、普段クルマを運転している時に全開にすることなど稀で、ほとんどがバルブを絞っている。この間中、エンジンの力をポンピングロスで無駄にしているのだ。 ■排気ロス 排気ガスには残存エネルギーがある。だからターボエンジンではこの排気ガスでタービンを回して空気を圧縮することができるのだが、それでもまだ使い切ってはいない。排気ガスの温度と圧力が大気より高い分はエネルギーをロスしていることになる。 ■冷却ロス エンジンは熱い。しかも冷却水を介してラジエターから熱を捨てている。この熱も燃料から出たエネルギーだから捨てている熱はロスである。 ■摩擦ロス エンジンや駆動系には回ってこすれる場所がたくさんある。これらの摩擦も当然ロスだ。