米連邦最高裁、数少ないチェック機関になるか-トランプ氏の権限巡り
関税
トランプ氏の1期目の在任中、同氏が輸入鉄鋼製品に課した25%の関税を巡り、業界団体が求めた差し止めの訴えを最高裁は2度にわたり退けた。トランプ氏は、国家安全保障を理由に関税を課す広範な裁量を大統領に与える「通商拡大法232条」の規定に依拠した。
一律の関税賦課の場合、この法的権限を行使することは難しくなる。保守系シンクタンク、マンハッタン研究所の憲法研究ディレクター、イリヤ・シャピロ氏は「トランプ氏が関税を賦課しようとすればするほど、大きな困難に直面することになる」と述べた。ただ、裁判所は一般的に関税を課す大統領に「多くの裁量権を与えてきた」とも語った。
トランプ氏には、危機に対処するための幅広い裁量権を大統領に与える国際緊急経済権限法(IEEPA)など、他にも自由に使える手段がある。
結局、トランプ氏が議会から与えられた権限を越えたと裁判所が判断するかどうかが問題となるかもしれない。裁判所はまた、議会が大統領に多くの裁量権を与えることによって、憲法違反の形で立法権を譲り渡したかどうかを検討する可能性もある。
不法移民取り締まり
トランプ氏は米国史上最大規模の不法移民強制送還を約束している。この計画の行方は、次期大統領がどれだけ迅速に動くかや、移民法や憲法の適正手続き条項に基づき、同氏にどれだけの自由裁量権があると裁判所が判断するかにかかっている。
ケース・ウェスタン・リザーブ大学ロースクールのジョナサン・アドラー教授(行政法)は、「トランプ次期政権が議会の承認なしに移民法を事実上作り変えようとしているのであれば、裁判所はそれに対して大きな制約となるだろう」と語る。しかし、関税と同様、移民問題に関しても大統領は「恐らく他の分野よりも大きな権限を持っている」と話した。
一方でトランプ氏が、不法移民の子供たちの出生地主義の市民権を廃止するという公約を実現しようとすれば、さらに厳しい監視に直面する可能性がある。憲法は長い間、米国内で生まれた者は誰でも米国市民であると解釈されてきた。