「良い睡眠が子どものこころを整える」子どもがしっかり眠れているかのチェックポイントとは
――「寝る子は育つ」と言うように、子どもの成長にとって睡眠が欠かせない要素であることはよく知られています。けれどその睡眠には、「量」だけでなく「質」も必要なことをご存知でしょうか。「質量ともに良い睡眠」が取れないと、成長の遅れや健康のリスクだけでなく、こころや行動の問題にもつながり得るのだそうです。 児童精神科医の宇佐美政英先生に「睡眠の質や量が低下すると起きる弊害」や、「睡眠不足だと判断する目安」について伺いました。 成績上位層ほど早く寝る!? 東大卒スーパー家庭教師に聞いた「中学受験生の理想的な生活リズム」
睡眠不足は行動上の問題となって現れる。それを避けるためにできることとは
前回【関連記事:早起きでつくる“子どものこころとからだの健康”。「良い睡眠」の正しい取り方とは】もお話ししましたが、「良い睡眠」のためにはまず「十分な睡眠時間を確保できるような生活リズムをつくること」が大切です。 子どもの睡眠不足は成長ホルモンの分泌に悪影響を及ぼすだけでなく、さまざまな問題の起点になります。中でも重要なことは、「睡眠不足は行動上の問題として現れてくる」ということです。 子どもは体調的な変化を言語化できないことも多いので、眠気をうまく意識できないまま“イライラ・多動・衝動行為”などとして現れることが少なくありません。ADHDと診断される子どもの中には、その“行動上の問題”が睡眠不足からきている子もいるかもしれませんし、子どものそういった性質が睡眠を整えることで落ち着く可能性もあります。 生活リズムを整え「良い睡眠」を取らせるためには、毎朝、決まった時刻に起きて朝日を浴びること。そしてしっかり朝食を摂り、適度な運動をすること。寝る前に明るい光を浴びないこと。 最近では子どものエナジードリンク過剰摂取も問題になっていますので、カフェインの摂りすぎや摂るタイミングにも気をつけてみてください。
子どもとしっかり話し合うには充分な睡眠と子どもの気持ちを一度は受け入れること
就寝前にスマホやテレビのモニターを見ると睡眠の質が低下することは一般にもよく知られていると思いますが、寝床に入ってからもスマホやゲームに熱中していると目が覚めてしまい、夜更かしの原因になります。 前々回のネット依存の回でもお話ししたように、ゲームやネットに依存している子どもは睡眠の問題を抱えていることが多いんですね。 ただ子どもが夜更かしをしているからと言って、頭ごなしに叱るのは問題をこじらせるだけ。「うるせえな」ってなっちゃうだけです。 夜更かしもそうですし、ゲームや不登校も同じようなことになりやすいんですが、子どもときちんと話し合える関係性ができていないと、それらの問題を解決していくための一歩を踏み出せないんですね。そして話し合うためには、子どものこころも体も整っている必要があります。 昼間の覚醒がしっかりできていないと衝動のコントロールが悪くなります。大人だって睡眠不足だと怒りっぽくなるかもしれませんし、私たちも当直明けだと余計なものを買っちゃったりするわけです。僕だけかもしれませんが、疲れてボンヤリしていると思考が浅薄になってしまいますし、逆にクリアになれば「しっかり考えてから」ってなりますよね。 なので、子どもに「親とちゃんと話してもいいかな」って心を開いてもらうには、きちんと睡眠を取らせて日中にしっかり覚醒させる。そのうえで、落ち着いているときに「子どもの話を聞く」という姿勢が良いと思います。 最初から子どもを説得しようとすることは、多くの場合でうまくいきません。親が子どもを説得しようとすると、「自分のことをわかってくれない」という気持ちが強くなり、話したい気持ちがなくなっていきます。親が自分を説得する気ではなく「話を聞いてくれるんだな」っていう関係になって、ようやく次に進めることが多いんですよね。 外来でも子どもたちにたまに言いますね。「むずかしいことをいっぱい言われたり、あれダメ、これダメって言われるよりは、“よく寝る”っていうことだったらできそうでしょう?」って。そしたら「それならできるかもしれない」ってなるので、「じゃあまず、夜だけしっかり寝ようか」と。 そうやって夜眠れるようになると寝不足の影響が少なくなって、本来の穏やかさが戻ってきます。子どもが穏やかだとこっちも穏やかに話しやすくなりますし、「じゃあ一緒にどうしようか」という話になりやすいですね。 なので子どもたちがしっかり自分のことを考えられるようにするには、まず生活リズムからしっかり整える。そのためには毎朝、決まった時刻に起きて朝日を浴びるということが大事だと僕は思います。