「覚えておいて欲しいのだが……」古代ローマの哲学者が教える「宴会ルール」が現代でも参考になる
では、古代ストア派の人々はどういう風にしてお酒と付き合ったのでしょう? ドナルド・ロバートソン(編集部注/現代ストア派の作家)によれば、 「ギリシャの哲学者たちの思想をまとめた『学説史家』のディオゲネス・ラエルティオスは、ストア派の人々はいつも節度を持ってワインを嗜んだが、酔わないよう自分を戒めていたと言います。同じく、ギリシャ語の著作物を抜粋して編纂したストバイオスは、過度にワインを愛飲するのをストア派が病気に分類しており、しかし不思議にも、ワインを毛嫌いするのも病気と見なしていたと伝えている」 のだそうです。 アルコール類摂取のコントロールは、古来より普遍的できわめて人間らしい問題なので、ストア派は対処法をいくつか考え出して、節度を保つために役立てました。 ● 酒の節度を保つためにストア派が 生み出した『断る』テクニック 例えば飲酒において節度を保つのを習慣化するためには、古代ストア派が編み出した優れたテクニックがあります。 その中の1つは、グラス1杯のワインを勧められても断るというもので、これは自分が喉から手が出るほど欲しくてもぐっとその欲望をこらえる訓練です。 また、エピクテトスは食べ物にしても飲み物にしても、勧められたときにがっとつかみ取らないようにと弟子たちに促しました。彼は宴会を例に挙げて、節度を保つ利点のたとえ話をしましたが、これは食べ物のみならず生活全般に当てはまります。 「覚えておいて欲しいのだが、宴会での振る舞いと同じようにしなくてはならない。自分のところに何かご馳走が運ばれてきたらどうするか?手を出してほどほどの量をもらう。 自分を飛ばして行ってしまったらどうするか?呼び止めてはいけない。 まだもらえないときは?欲しがってじたじたせず、自分のところに回ってくるまで待つのだ。 子ども、伴侶、任務、富についても同じようにしなさい。そうすればいつか神々の食卓に招かれるにふさわしい人間になるだろう。 そして、自分の前に置かれたものに手をつけようとさえせず、自ら見合わせることができるなら、神々と食卓を共にするだけでなく、統治を共にするにもふさわしい人間になるだろう。」 ワインに関しては、さらなる要素がエピクテトスの教訓にあります。 すなわち、禁酒することを偉そうに自慢してはならないというものです。