「お母ちゃん、どうして私を捨てたの?」心優しい祖母が初めて打ち明けた壮絶な人生…母に捨てられ養母にイジメられても幸せになれた理由【作者に聞く】
自身のブログやSNSで実話をもとにしたエッセイ漫画を描いている漫画家・ゆっぺさんが、戦前から生きる“祖母・キヨさん”の幼少期からの実体験を漫画化した「親に捨てられた私が日本一幸せなおばあちゃんになった話」。本作を公開していたブログ「ゆっぺのゆる漫画ブログ」は、「ライブドアブログ OF THE YEAR2021」で最優秀グランプリを受賞するなど大きな話題となった。本作について、作者であるゆっぺさんに話を伺った。 【漫画】養母のいじめに怒髪天→本編を読む ■「おばあちゃんのエピソードをかっこよく描こうという感情は持たずに取り組みました 自身の祖母・キヨさんの実話を元に描かれている本作。ゆっぺさんは「私は全体のプロットを組み立ててから描くタイプではないので、定期的に話を聞いては描くというスタイルで作成していきました。事前にすべての話を聞いていたわけではなかったので、どんな展開になるのかは私自身もわからぬまま描いていました。 だいたい一度に2~3時間ぐらい話を聞いたら、それを数回分に分けて綴っていくんですけど、おばあちゃんの話は聞いているうちに話が飛んだり、重複してしまったりするので、ノートに書き込んだ内容を時系列に並べ直してつなげるのが大変でした」と、本作の制作を振り返る。 制作時に意識していたことを尋ねると、「気を付けていたことは、おばあちゃんが言いたいことを全部吐き出すまで、私が一切口を挟まずに聞くことです。そして、このお話で描かれるのは祖母の経験なので、描く際も私の主観は一切排除しました。おばあちゃんの言葉をちょっとでもかっこよく描いてしまったら、それはもうおばあちゃんの話ではなくなってしまうので。 ですから、できるだけ忠実に描くことを意識しました。エピソードトークをかっこよく言わせようとか、それをかっこよく描こうという感情は持たずに取り組みました」と、あくまでキヨさんの視点から語られた物語を描写することに注力した様子。 そんな本作だが、漫画化するにあたってかなり悩んだという。「私はおばあちゃんの今の気持ちを伝えたいという思いで描きたいと思ったのですが、漫画ではおばあちゃんの過去を忠実に描くことになるので、家族の苦労話でお金儲けしていると勘違いされてしまったらイヤだなと思い、最初は躊躇しました。 しかし、おばあちゃんの過去だけでなく、戦争の話を語れる人もどんどん減っているので、私だけ聞かせてもらっているのではもったいない。戦争当時のことは語りたがらない方も多いそうですし、祖母もずっと語ってこなかった。しかし、せっかく貴重な話を聞くことができたのでやはり作品にしたいと思い、本人に漫画化の話を伝えたら『いいよ』と言ってくれたので、形にすることにしたのです」と、漫画化までの経緯を明かしてくれた。 キヨさんが自身の過去を語ったのはこれが初めてだったという。「実は話に出てくる人物は、祖父も含めて、全員亡くなっているんです。だからこそ、おばあちゃんもようやく話せたみたいで。養母の娘さん家族とは結婚してから付き合いがなくなってはいたものの、かつてお世話になった方々なので実在しているうちは悪口になってしまうから口にしないと心に決めていたそうなのです」とのこと。それだけに、ゆっぺさんは登場人物を必要以上に悪く描かないよう心がけたそうだ。 取材協力:ゆっぺさん (@yuppe__2)