若狭東が単独で2大会ぶり35度目の花園切符。高校ラグビー全国大会福井県決勝
冬の花園、2024年度「第104回全国高校大会」の福井県決勝が11月3日、小浜市総合運動陸上競技場で行われた。若狭東が小浜市内のライバル若狭から後半4トライを奪って31-7(前半7-7)で勝利し、単独で2大会ぶり35度目、昨年度に敦賀工業高と合同で出場したものを含めると通算で9大会連続36度目の花園切符を手にした。 試合はグリーン(若狭東、以下=東)とエンジ(若狭)がお互いの意地をぶつけあった。インスタンドから見て左から右へ強風が吹く中、風上は若狭。 東はキックを封じ自陣からも細かくつなぎながら敵陣へ入る。8分過ぎに若狭が自陣で連続、反則をおかすとタップから攻める。SO道端謙心(3年)が若狭守備網を破り中央へ先制トライを決めた。コンバージョン(G)は主将FB辻優年(3年)が成功。その後も東が優位に進めるもトライを取り切れない。 若狭は、昨年の決勝で10-22と合同チームに敗れ11回目の花園を失った。寺本幸司監督は「去年はキックの使いわけ、システムなど詰め込みすぎた。その反省で今年はシンプルに。キャリアーは前に行く。ディフェンスはタックルを」。その構想を選手は体現していた。 24分、敵陣でのPKから攻め続け、右PR勝本悠生(2年)が右中間インゴールへねじ込んだ。Gは司令塔の役割もこなしたCTB真木玲生(3年)が蹴り込んで7-7と追いつく。 前半終了間際には東がディフェンスにいった際に若狭を持ち上げるタックルでイエローカードを受ける。 勢いづく若狭は後半開始からも数的優位を生かしゴールラインに迫ったが、越えることができなかった。「取り切れていれば」と寺本監督は振り返る。 逆にこの危機をしのいで15人に戻った東。後半なかばにゴールライン5メートルでPKを得るとここもタップから展開、SO道端が2本目のファイブポインターになり勝ち越した(14-7)。さらに4分後、またも道端がトライを挙げてハットトリックを達成し、試合の行方は決まった。最後は主将、辻が右隅へ仕留め31-7、フルタイムの笛を聞いた。 試合後、東の朽木雅文監督は円陣で選手へ語りかけた。「試合内容は良くなかった。負けなかったことが相手との実力差。(花園に向けて)来週からもっとしんどい練習をする」。試合で出た課題のディフェンスを徹底的に落とし込む。主将、辻は「規律を守ることが大事」と苦しんだ試合を糧にしたい。 福井県大会は2000年度の第80回大会以来、東と若狭のライバルが決勝で争ってきた。昨年、東が合同練習をしていた敦賀工業と組んで出場し全国初の合同チームで優勝、話題をさらった。 福井県では小浜市を中心に敦賀以西の「嶺南地域」がラグビーの中心だ。しかし中学にラグビー部はなく、初心者が多数の両校。この状況を変えようと、大人のクラブ「アトムズ」が2017年に小学生チームの「小浜ベイズウオーター」を立ち上げた。 2年前には中学生向けに「若狭ブルーズ」を創設。両チームで楕円に親しんだ選手2人が今年、東に入学した。背番号11をつけた坂下司と14の膽吹治人(いぶき)だ。 両翼を担った2人は「去年までスタンドで見ていた舞台に立てました。花園までフィジカルを強くしたい」と聖地を見据えた。 後輩の小学生、15人が参加するベイズウオーターは決勝戦前、隣のグラウンドでタグラグビーの練習をしていた。「ラグビーは面白い?」の問いかけに「当たり前!」。福井ラグビー界の明日を担う明るい返事。県ラグビー関係者によると、福井市など嶺北地域の私立高校にラグビー部創設の話があるという。 (文:見明亨徳)