実業家から高校野球監督に転身わずか1年半で甲子園出場!不祥事でボロボロだった聖カタリナを再生させた男の「経営手腕」と「野球王国復活への情熱」
「1×20」より「1×1×20」
「1×20」ではなく「1×1×20」――。 浮田監督の指導方針にはこんな原則がある。 「20人の選手に対して1つのことを全員に同じように教えると、壁にぶち当たった時に共倒れになってしまう。人間は1人1人個性が違うのだから、20人いたら20通りの教え方、話し方をしないといけない。会社の社員に対する教え方と同じですね」 主将の河野 嵐(3年・一塁手)は語る。「自分は気持ちがどうしても高ぶって冷静になれない部分があったんですが、監督から『気持ちは熱く頭は冷静に』と言ってもらって冷静にプレーできるようになりました」。 また、この愛媛大会を通じ最速も143キロに達した190センチ右腕の有馬 恵叶投手(3年)には、公式戦初登板の2回戦・今治西戦前に「今日の試合で人生を変えよう。責任は自分がすべて取る」と言って送り出した。有馬は快投を見せ「ドラフト候補」に浮上したのだった。
「野球王国・愛媛」代表として……
「LINEメッセージは400件。Facebookのコメントが200件、いいね!が700件。あとは電話もたくさんきました」 大量の愛媛大会優勝祝福メッセージに浮田監督は目を細めた。 「愛媛県の代表として1勝は必ず取ろう」 それが聖カタリナの目標だ。チームのスタイルは、浮田監督が松山商時代に窪田 欣也、澤田 勝彦の両監督から刷り込まれた「相手に流れを渡さない野球」がベース。攻撃面では新基準バットに対応した「強いゴロを打つ」打撃を徹底する。決勝・西条戦の7回裏にバント攻めなどで奪った決定的な3点は、まさに彼らの意思統一が凝縮されたものである。 選手たちはもちろん、浮田監督としても初めての甲子園。生まれ変わった聖カタリナ学園野球部の新たなチャレンジがもうすぐ始まろうとしている。
寺下 友徳