イスラエル・ガザ戦争を後押しする「ホワイト・フェミニズム」…ハマスの非道さを理由に、パレスチナ市民への不当な攻撃が正当化されていいのか?
イベント開催時、すでにパレスチナ市民の犠牲は2万人
イスラエル側は、10月7日にハマスによるイスラエル人女性や少女への組織的な性暴力、さらには組織的な性器切除があったと主張してきましたが、ハマス側はこれを否定しています。今後も事実確認を進めていく必要がありますが、いずれにせよ、紹介したような、アメリカ人女性たちによる性暴力への強い抗議そのものについては、私も深く共感し、立場を同じくするところです。 しかし問題は、ハマスが行なったとされる組織的な性暴力への彼女たちの怒りが、どのような政策を正当化することになっているか、です。 イスラエル人女性たちに全幅の共感や同情を寄せ、彼女たちの身に起こったことに憤るアメリカ人女性たちの視界には、イスラエルの軍事行動によって生活を壊され、大切な人を奪われ、さらには命を奪われてきた無数のパレスチナ人女性たちは、まったく存在していないかのようです。 前述のイベント開催時、すでにパレスチナ市民の犠牲は2万人に迫っており、その後も増え続けています。ガザには5万人の妊婦がいるといわれており、イスラエル軍に病院まで破壊し尽くされ、麻酔もなしに屋外で出産しなければならない女性たちも続々と出てきています。 しかし、サンドバーグもクリントンらもハマスによる蛮行ばかりを語って、その後にいかにパレスチナ人に対して残酷なことが行なわれてきたのか、決して語らないのです。 そういう姿勢を取ることで彼女たちは、「残酷なテロリストでレイプ魔」でもあるハマスを壊滅させるための軍事行動は徹底的にやるべきだ、それがいかにパレスチナ市民の犠牲を生もうとも続けるべきだ、といった形で、イスラエルの無差別的な軍事行動を肯定し、後押しする働きを果たしてきました。 そういうつもりではない、というのであれば、パレスチナ人女性たちの苦しみや、彼女たちが受けている暴力についてもきちんと言及し、ハマスの残虐行為を理由に大々的に展開されてきたイスラエルの軍事行動も批判すべきです。しかし彼女たちは決してそうしない。 フェミニズムとは、いかに弱い人間でも、あらゆる人々、とりわけ守られなければ暴力にさらされてしまう弱い立場にある人々の生命と尊厳を守ろうとする思想であるはずです。 ある女性たちの尊厳や命が踏みにじられたことを理由に、別の一群の、それもより弱き人々の尊厳や命を踏みにじる行為を肯定する。はたしてサンドバーグやクリントンの立ち位置は、「フェミニスト」といえるでしょうか。私はいえないと思います。