定年後の再雇用で給与が下がるのは「合法」なの?
定年後の再雇用で給与が下がった、という話を聞いたことはないでしょうか。実際に勤務先の給与形態がそのようになっており「元上司も再雇用時に給与が下がった」ということを見聞きした方もいるでしょう。 そこで、定年後の再雇用で給与が下がるのは有効なのか、考えてみました。
定年後の再雇用時は、給与が下がるのが一般的
国税庁の「令和4年分民間給与実態統計調査」によれば、1年を通じて勤務した給与所得者の場合、年齢階層別の平均給与(男女計)は55歳~59歳の時点の546万円がピークになっており、60歳~64歳のときには441万円と、一度ガクッと落ちています。おそらくこれは60歳時に定年を迎え、その後再雇用などを利用した際に、給与が下がってしまうことが原因だと考えられます。 また、65歳~69歳において、平均給与は342万円となり、類似した動きで落ちています。こちらも、65歳が定年の会社で再雇用を利用して勤務を続ける方が増えたため、それ以前よりも給与が下がっているのだと思われます。 もちろん再雇用以外にも、再就職やキャリアチェンジなどを経て、給与が大きく下がっている可能性もあります。とはいえ、大企業中心に再雇用が積極的に行われている昨今、再雇用も給与低下の理由の一つとして、十分考えられるでしょう。
定年後の再雇用で給与が下がることは許されるのか
定年後の再雇用で給与が下がることは珍しくないとはいえ、場合によっては違法となることがあります。 定年後の再雇用は、契約社員など有期雇用契約になることが一般的です。すると、正社員と比較した場合「同一労働同一賃金」の問題が発生します。同一労働同一賃金とは、正規雇用であるか非正規雇用であるかに関係なく、同一の業務を行っている場合は同一の賃金を受け取るべきだ、という考え方です。 そのため、定年後の再雇用で、仕事内容などが変わらないのに給与が下がる場合は、違法となる場合があります。実際、令和5年7月20日に最高裁で下された判決においても「定年時月額18万1640円だったある職員の給与が、再雇用後は7万4677円まで下がった」というケースが、いわゆる不合理な格差(同一労働同一賃金に違反する)とされています。