隣家の“限度を超えた悪臭”を理由に裁判!「損害賠償90万円」を求めた結果…裁判所が下した「妥当な損害賠償額」【弁護士が解説】
裁判所は「臭気指数」を根拠に「限度を超えた悪臭」と判断
この点については、裁判所は、 「悪臭が受忍限度を超えているか否かを検討するに当たっては、悪臭が公法上の基準を超えているか否かが重要な考慮要素になると解すべきであり、同基準を超える悪臭が発生している場合には特段の事情がない限り、同悪臭は受忍限度を超えていると認めるのが相当である」 と述べています。 以上を前提として、本件の事例において裁判所は、臭気指数が法律上の規制基準を超えていることを理由に、受忍限度を超えた悪臭が発生していると判断しました。 「原告らの居住地域においては、事業活動により生じる悪臭については臭気指数10がその限度とされているところ、事業活動によって生じる悪臭と猫の糞尿による悪臭の受忍限度を別異に取り扱うべき理由は認められない。 そうすると、本件では、原告X1宅の敷地と被告宅の敷地の境界線において、現時点においても上記基準を大幅に上回る臭気指数17ないしはそれに近い悪臭が発生していると認められるのであるから、原告X1宅の敷地と被告宅の敷地との境界において生じている悪臭が受忍限度を超えていることは明らかである」 「慰謝料」として認められたのは24万円にとどまるが… では、このような場合に損害賠償としてどの程度の金額が認められるのでしょうか。 原告は慰謝料として90万円を請求していましたが、裁判所は、慰謝料として24万円(悪臭の発生が証明されている平成22年5月ころから約1年間の分として)を認めるにとどまっています。 その他の損害として ・弁護士費用と臭気測定費用のうち、15万円 ・原告の自宅の1階が賃貸物件であったところ、悪臭によって空室となっていることから、空室が継続している期間(8ヵ月分)の家賃相当額108万円(家賃は月13万5,000円) も認められています。その他、判決では、悪臭の発生について 「被告は、原告X1に対して、別紙物件目録記載1の土地と同記載3の土地の境界線において、悪臭防止法2条2項で定める臭気指数10を超える悪臭を発生させてはならない」 との差止も命じています。本件は、近隣住宅の悪臭に対する法的対応について参考になる事例です。 ※この記事は、2023年12月29日時点の情報に基づいて書かれています(2024年1月17日際監修済み)。 北村 亮典 弁護士 大江・田中・大宅法律事務所
北村 亮典