【パリ五輪】過去にボクシング女子に“参加資格なし”の選手が勝利 背景に長引く“ルールの不在”が…
パリ五輪で2人の選手の「ボクシング女子」への参加が国際的な論争を呼んでいる。両選手は、昨年の世界選手権において検査の結果、「女子」選手としての参加資格がないと判断されていた。にもかかわらず、IOC(国際オリンピック委員会)が、2選手にパリ五輪でのボクシング女子への参加を認めたためだ。 そのうちの1人は、対戦相手の途中棄権により初戦を突破。対戦相手は「公平ではない」と涙をこぼした。女子スポーツの「公平さ」とは――?
■相手選手が46秒で“棄権”
ボクシング女子への参加が物議を醸している2選手は、アルジェリア代表のエイマヌン・ハリフ選手と台湾代表のリン・イクテイ選手。 ハリフ選手は1日、ボクシング女子66キロ級予選の16ラウンドでイタリア代表のアンジェラ・カリーニ選手と対戦した。試合開始からわずか46秒でカリーニ選手が棄権したため、初戦を突破した。 カリーニ選手は開始30秒で顔面へのパンチを受け、鼻に強い痛みを感じたため、続行を断念したという。フランスメディアは、カリーニ選手はハリフ選手との握手を拒否し、「これは公平ではない」と叫んだと報じている。
■過去に“性別不適格”との判断も…
ハリフ選手は2018年の世界選手権から女子のカテゴリーで出場。東京五輪にも出ていた。今回のパリ五輪ではIOCの公式HPに、ハリフ選手は「昨年3月に開催された世界選手権で適格性を認められず、決勝戦に出場することができなかった」と紹介されていた(現在は削除)。男性の主要な性ホルモンである「テストステロン」の値が高すぎるという理由によるという。 しかしIOCが、同選手のパリ五輪での女子競技参加を認めたため、激しい議論が起きている。
■国際ボクシング協会はIOCを批判
この時の世界選手権を開催者したIBA(国際ボクシング協会)は、議論の高まりを受けた先月31日、ハリフ選手とリン選手が失格となっていた昨年の大会の経緯を説明する声明を発表した。 IBAによると、この2人の選手は2022年および2023年の世界選手権期間中に実施された2回の検査の結果、女子競技に参加するための条件を満たさなかったという。このためIBAは、綿密な検査結果の検討の上で、競技の「公平さ」を保つため両選手を失格とした。このためハリフ選手は決勝戦に出場することができなかった。 IBAは検査の詳細は明かしていない。さらにIBAは、IOCが問題の2選手のボクシング女子への参加を認めたことを批判し、競技の公平性と安全への懸念も表明している。 海外メディアによると、IBAのクレムリョフ会長は2023年当時、ハリフ選手とリン選手が、通常、男性が持つ「XY染色体を持っていたことが判明した」と明かしている。一方、まれに女性でもXY染色体を持つことがあり、両選手がこのようなケースに当てはまる可能性もある。 IOC広報責任者のマーク・アダムス氏は2日の会見で、ハリフ選手について「女性として生まれ、女性として登録され、女性として生きてきた選手で、トランスジェンダーではない」としている。