「ひと昔前だったらお仕事をもらえてなかっただろうなと思います」――バラエティーで引く手あまたの朝日奈央が辿り着いた答え
朝日を導いた師匠・バカリズムの背中
アイドルを卒業した自分はこの先どうなるのか。朝日自身はバラエティーが一番自分に合っていると感じていた。悩める元アイドルを導いてくれたのは「師匠」の背中だった。 2006年の「R-1グランプリ」(当時は「R-1ぐらんぷり」)で決勝に進み、一躍人気芸人の仲間入りを果たしたバカリズムは、アイドリング!!!が出演する番組の総合司会を、グループ解散まで10年近く務めた。彼の薫陶を受けたメンバーたちは次々とバラエティーの才能を開花させていった。 「升野さん(バカリズム)は言葉で教えるとか、そういうタイプじゃない。言葉じゃなくて行動で、こういうふうにするんだよっていうのを教えてくれている。私がもじもじして企画をやり切れなかったら、全力でやるまで待っていてくれる。そしてあえて振ってくれる。そのメンバーが持っている個性を引き出してくれたんです」 解散当初は毒舌キャラを模索したこともあった朝日だが、簡単に笑いを取ろうと悪口に走る姿をバカリズムは諌めたという。それはいま、別のかたちで生かされている。 「アイドルの頃から、客席や握手会にいるファンの方をいじるというのはよくある光景だったんです。ほぼ初めましての人を楽しませるスタイルは、ロケ先で会った一般の方とのからみに生きているのかも。それを面白がってくれる番組もあって」 次第にバラエティー番組に呼ばれるようになり、やがて「ゴッドタン」のスタッフの目に留まる。そこから快進撃が始まる。歯に衣着せぬ発言、時に遠慮なしのツッコミで一気に世間の注目を集める。 「卒業したあとどうするかずっと考えていたけど、不器用すぎて目の前のことしか集中できなかったんです。アイドル時代も『これって今後につながるの?』みたいな仕事もあった。でも、楽しくやっていたら、ほんとにつながった。アイドリング!!!をやってなかったらバラエティーには出てないと思いますね」
とがった個性がないことが強みになった
ブレークした時期も良かったという。 「ひと昔前だったらお仕事をもらえてなかっただろうなと思います。解散と前後してブレークした子たちは本当にキャラの立った子ばかり。みんな個性的で、いい意味で場を乱すのが上手。私はそういうタイプじゃなかったから」 空気を汲み取りそっと番組と視聴者に寄り添うスタイルの朝日は今の時代にマッチした。とがった個性がないことが強みになったともいえる。 「最初はそれこそ目立ってなんぼという思考しかなかったけど、今はもう自分の番が自然と訪れるのを待つようにはなりましたね」 例えばメインのMCがいて、ゲストが5人いたら、自分のポジションを最初に把握するという。そして、自分の話す順番がどこで回ってくるか考える。 「面白いコメントお願いしますとは言われないんです。私と同世代の視聴者が、『そうそう、それそれ』って共感してくれるような発言を求められることが多くて、それは意識するようにしています」 時にやさしく、時に毒舌。テレビのスタッフは等身大の女性像として朝日をキャスティングしているのだろう。 「だからね、お試し的な番組に呼ばれることが多いんです。本放送が始まると、あれ、私いないなって(笑)」