【写真で見る】敏腕TVマンが見た!「絶滅危惧種と暮すチベット民族」驚きのリアルな日常(前編) インドと中国の境界線「最果ての村」を目指した結果
車内に座る人々を見渡すと、女性が7割を占める。着ている衣服などから察するに、働いている女性たちに違いない。 その風貌は、いつか写真で見た「戦前の日本人女性」のようだ。 真っ黒に日焼けした顔に、もう少し、厳しさとたくましさを加えたような感じ。自然を相手にしている農民や漁師たちに宿る、人間本来のナチュラルな美しさが滲み出た、とてもいい表情をしている。 バスの内装は相当古びていて、モスグリーンの塗装が施されているが、老朽化のせいで所々ペンキがはがれ、鉄が剥き出しになっていた。
まるで、映画で見たアメリカの刑務所の囚人輸送バスを彷彿とさせる。 だが、その中には小さな子どもや若い母親、そして、その親子を見守る年配の人々が存在し、優しさと温もりが漂っている。 無機質な鉄とチベットの女性たちが、絶妙な調和を見せ、異国情緒を一層際立たせていた。 ■トイレがなく、森の中で用をたす 1時間ほど進んだところで、10分間のトイレ休憩があった。ダバと呼ばれる小さな食堂でバスを降りる。 しかし、探してもトイレはない。北インドの長距離バスではよくあるのだが、トイレがなく、森の中で用をたすのだ。
大便をするときは、ペットボトルの水を使い、左手でお尻を洗う。初めは戸惑ったが、インド縦断の長旅で、その技はすでに体得済みだ。 すると、随分と時間が経ってから、カナさんが険しい表情を見せ、こちらに戻ってきた。 「遅かったね」 「ここ、砂漠地帯だから、隠れる木がないんですよね。ダバの窓から視線を感じたんで、死角を探していたんですけど、ないんですよ。女性用に”ついたて”か何か用意してくれればいいのに」
標高が4000m近いこの場所では森のような木々は育たない。しかも、スピティは寒冷砂漠エリア。緑があっても、高木は見当たらない。 カナさんの表情から察するに、覗き見しようとした男に相当怒っているようだ。 それにしても、チベットの女性たちは、いつもどうしているんだろうか? 若い女性なら、同じ感覚を持っているはずだが。 ■酸素の薄い高地で置き去りのピンチ 「あ、ごっつさん、バスが出発している」 「やべー、本当だ」