「介護告白したら戦力外」の恐怖心 支援の空気つくれぬ企業
アンケート調査の自由回答には「介護は突然始まる」との声がいくつも寄せられたが、親が生きていれば誰でも介護という課題に直面する可能性はある。それでも自らが介護を担う可能性に気づいていない、もしくは見ないふりをしようとする人は多い。 これは育児との大きな違いだ。企業も社員も「介護はいずれ来る問題だが、今ではない」という意識でいる。企業の施策は後手に回り、社員のリテラシーも上がらない。たとえ介護を始めていたとしても「介護は個人的な問題」という観念にとらわれ、会社にひた隠しにする働き手もいる。 ●横行する「隠れ介護休暇」 「介護で困っている人はいません。休暇制度はあるけれど利用者はいないし、退職する人もゼロ」 ビジネスパーソンの介護支援をサポートする産業ケアマネジャー(ケアマネ)のOさんは、営業先でよくこう告げられる。しかし「実は『介護のために休む』と言いづらくて、理由を言わずに普通の有給休暇で対応している人が多い」。「隠れ介護休暇」が横行しているのだ。 育児支援の導入時は制度を利用しようとする社員に「子育てのために仕事を休むのか」と、厳しい目が向けられていた。今、ようやく男性の育休が市民権を得つつあるが、介護については「職場で支援するもの」という意識が育児ほどには醸成されていない。 親の介護で休むことに罪悪感を覚える──。そんな雰囲気がある職場では、仕事と介護の両立の悩みを語ったり、そもそも介護していることを打ち明けたりするのは難しい。今回のアンケート調査で職場について聞くと、「介護は個人で解決すべき問題」という雰囲気だと答えた人が64.2%と、「会社が支援すべき問題」という雰囲気の職場(32.5%)の2倍に達した。 自由回答欄にも「親の介護で仕事を休むことについて、職場で謝罪させられた。やるせなく、介護の寝不足もあって鬱になった」(40代女性、中小企業勤務)といったコメントが寄せられた。 「介護していることを会社に知られたら、仕事に全力投球できないと判断されて、ポジションを奪われるのではないか」という不安を持つ社員もいる。企業が介護相談の場を用意していても「減給や退職勧奨のきっかけとするために、待ち構えられていると感じ、感情的に受け入れられず相談できなかった」(50代女性)、「勤務先に相談してもマイナスしか考えられない。今後も相談するつもりはない」(60代男性、大企業勤務)などと、介護が自らのキャリアに傷を付けると恐れる声がいくつも集まった。