トランス男性の友失った悲しみ繰り返さない 函館の支援団体、ピロシキに「多様性」願う
宮本さんの母親から亡くなったことを知らされ、北見さんは病院までの道を走った。「悲しみも、みやものことも一生忘れないし、二度とこんな思いをしたくない」と誓った。 ▽支援団体 宮本さんは自らの苦悩について講演や執筆をするなど、LGBTQ+の支援活動をしていた。宮本さんが亡くなった後、北見さんは宮本さんの母親から活動を引き継がないかと打診された。北見さんは「人が亡くなるような重大な内容に、専門家でもない自分は関われない」と一度は断った。 しかしその後、セクシュアリティについて学ぶ機会を得た。好きになる相手の性別に関する指向(Sexual Orientation)と自分の性別に関する認識(Gender Identity)、自分の性別の表現方法(Gender Expression)を意味する「SOGIE」という概念があり、人それぞれ違うこと。多様な性を生きる当事者を指す「LGBTQ+」だけでなく、多数派とされる「シスジェンダー」(性自認と割り当てられた性別が一致している人)の「ヘテロセクシュアル」(性自認と異なる性別の人を好きになる人)も含め、SOGIEであること。「LGBTQ+を巡る課題は自分事でもある」と考え直した。
2018年、北見さんは新たな支援団体「レインボーはこだてプロジェクト(RHP)」の活動を始めた。19年には学生メンバーを中心に、LGBTQ+のカップルを公的に認定するパートナーシップ制度の導入を函館市長に直談判し、22年に実現した。認定NPO法人「虹色ダイバーシティ」によると、同様の制度は今年6月28日時点で458自治体に広がっている。人口カバー率では85・1%に達する。 ▽「ゲイピロ」 2018年には北海道各地で講演会や当事者同士の交流イベントを主催するなど、支援活動をする団体「にじいろほっかいどう」とコラボし、北見さんの飲食店「まるたま小屋」名物のロシア料理ピロシキを、ゲイの当事者と一緒に作って食べる交流イベントの通称「ゲイピロ」を始めた。 参加者はひき肉やソーセージ、キノコなど30種類以上の具材やスパイスを選んでオリジナルのピロシキを作る。いろんな具材を使うため多様性を表すのにふさわしいと考えたからだ。オーブンで焼き上がるピロシキをわくわくして待ちながら当事者とおしゃべりするのが好評で、これまでに北海道だけでなく青森県でも開催した。北見さんは「社会問題への意識が高い人だけでなく、単にピロシキを作りたい人にもLGBTQ+のことを知ってもらえるのが強み」と胸を張る。 ▽これからの函館