落語家・桂雀々さん逝去 罹患していた「糖尿病」はどのような合併症を引き起こすのか
糖尿病の合併症の症状
糖尿病の合併症によって引き起こされる症状はさまざまです。続いて、合併症の症状を解説します。 [手足のしびれ] 糖尿病の合併症を発症していると、手足のしびれが症状としてあらわれます。これは神経障害や糖尿病足病変、動脈硬化が起こっている場合にあらわれる症状です。 先述したとおり、動脈硬化が進むと血管の弾力性が失われ血管が細くなります。手足に広がっている末梢動脈の動脈硬化が進むと、手足の血流が悪くなり、さまざまな不調を引き起こすのです。血流が悪くなることで手足の冷えを感じやすくなるほか、しびれを感じるようになります。これは、末梢動脈から手足の神経に十分な栄養が行き渡らなくなることによって起きるものです。 [手足の痛み] 手足の痛みも、糖尿病の合併症によってあらわれる症状の一つです。先述した手足のしびれと同じ原因によって起きる症状であり、手足のしびれが悪化すると痛みを感じるようになります。 末梢動脈が細くなることや神経障害が大きく関係しており、感じる痛みは「チクチクする」「ヒリヒリする」と表現されたり、うずくような痛みと表現されたりします。 症状が進むと歩いているうちに足が重くなり痛みを感じるようになり、さらに悪化するとじっとしても痛みを感じるようにもなるでしょう。 [視力の低下] 視力の低下も合併症によって引き起こされる症状の一つです。糖尿病網膜症を発症している場合に起きる症状であり、発症前に気づくことが難しい症状でもあります。 糖尿病網膜症を発症していると、網膜の血管がむくんだり壊れたりして白斑や出血が起きますが、初期段階では特に自覚症状はありません。網膜内に酸素や栄養が行き渡らない状態が続くと、足りない分を補おうと新しい血管がつくられます。この新しい血管は壊れやすく、網膜の内側にある硝子体内で出血を引き起こすと、視力低下の原因となる網膜剥離につながってしまうのです。また、網膜内にある黄斑にむくみができることも、視力低下につながります。この黄斑のむくみを糖尿病黄斑浮腫といい、糖尿病網膜症のどの段階でも起きる可能性がある病気です。 [失明] 視力低下が進行すると、糖尿病の合併症によって失明する可能性もあります。先述した硝子体内での出血により網膜剥離が起こると、視力の低下だけでなく失明にもつながる可能性があります。 糖尿病網膜症は自覚症状がほぼなく、硝子体出血や網膜剥離などの症状が起こった場合に気づくことの多い病気です。気づいた時には重症化している可能性もあるため、糖尿病網膜症を早期に発見するには、定期的な眼科検診が欠かせません。 [腎臓の働きが悪くなる] 糖尿病の合併症により、腎臓の働きが悪くなるといった症状もあらわれます。これは血糖値が高い状態が続くことによって腎臓の血管が細くなり引き越される症状です。 腎臓のなかには糸球体と呼ばれる毛細血管があり、この血管が血液を濾過して体に必要な栄養を取り込んだり、老廃物を排泄したりといった働きをしています。しかし糖尿病になり腎臓の血管が細くなると、この働きが鈍くなります。糖尿病腎症によって腎臓の働きが悪くなっているかどうかを早期発見するには、微量アルブミン尿検査が有効です。また、腎機能が低下していると糸球体で濾過される血液の流量が減少するため、血液検査によってどのくらいの量が濾過されているかを確認する方法もあります。 [水虫] 水虫も糖尿病の合併症によってあらわれる症状の一つです。水虫は皮膚の感染症の一種であり、真菌である白癬菌が原因となって発症します。足の指の間がかゆくなる趾間型白癬や、水ぶくれができる小水疱型白癬のほか、爪が厚く変形し色が白く濁る爪白癬などの種類があります。 糖尿病足病変の代表的な症状の一つであり、感染している場合は真菌薬や抗生物質などによる治療が一般的です。また、糖尿病足病変の検査では感染症の検査を行うケースもあり、その際に真菌の検査を行う場合があります。水虫を放置すると傷口から雑菌が入り二次感染を引き起こす可能性もあるため、早めの治療が必要です。 [足の変形] 糖尿病の合併症によって、足の変形が起きるケースもあります。水虫と同じく糖尿病足病変の症状の一つであり、神経障害が関係している症状です。外反母趾・内反小趾のほか、シャルコー足などの変形が起き、靴擦れをしたりタコができたりしやすくなります。 神経障害によって痛みを感じにくくなるため、変形によって怪我や骨折をしていても気づきにくいため、定期的な足の観察が必要です。また、変形した足には靴が合わなくなる可能性もありますが、神経障害のために靴が合っていないことに気づけない可能性があります。靴が合っていないと靴自体にも負担がかかって変形したり靴擦れで出血した血が付着していたりするため、足の変形が疑われる場合には靴も確認してみましょう。 [自覚症状がないケース] 糖尿病の合併症には、自覚症状がないケースも少なくありません。糖尿病網膜症や糖尿病腎症など、初期段階では自覚症状がなく、進行してから発症に気づくケースもあります。そのため糖尿病になると、合併症の症状の有無にかかわらず合併症に関する検査が必要です。 糖尿病網膜症を発見するための眼底検査などの眼科検診、糖尿病腎症に気づくための尿検査・血液検査など、合併症発見に必要な検査を適切に行いましょう。自覚症状がなく、検査で問題ないからといって合併症を発症していないとは限りません。合併症が重症化すると命に関わる可能性もあるため、医師の指示に従い、定期的な検査や予防を行いましょう。