岩手から世界へ! 刺し子の可能性を広げ、復興のその先を目指す「サシコギャルズ」の挑戦
東日本大震災後、岩手県大槌町で震災復興プロジェクトとして「大槌刺し子プロジェクト」が始動した。被災した女性たちが、日本の伝統手芸「刺し子」を施した商品を作り、販売する取り組みだ。 しかし、震災から時が経つにつれて否応なしにプロジェクトへの注目度は下がっていく。またメンバーの高齢化や町外への転出などにより、刺し子に携わる人も徐々に少なくなった。 そこで立ち上がったのが、アパレルブランド「KUON(クオン)」を運営する藤原新さんだ。大槌刺し子に以前から商品制作などを発注している他、復興支援の次のフェーズとして2024年に「サシコギャルズ」プロジェクトを始動させた。 藤原さんは、なぜサシコギャルズを立ち上げたのか。活動に込められた思いや目的を伺った。
刺し子の可能性を感じ、プロジェクトを発足
ー「サシコギャルズ」プロジェクトの発足に至った経緯を教えてください。 東日本大震災後の震災復興プロジェクトとして立ち上がった前身の「大槌刺し子プロジェクト」は、最盛期には100人くらい携わる方がいました。ただ、ボランティアだったので長くは続けられず、現在は事務局員を含めて15名ほどになりました。 復興支援のプロジェクトは、素晴らしい着眼点ではじまるものが世の中にたくさんあるのですが、震災から時間が経つにつれて忘れられてしまい、シュリンクしてしまうんです。大槌刺し子も同じで、そんな状況のなかコロナ禍を迎え、企業からの依頼が減ったこともあり大打撃を受けました。 大槌刺し子の事務員さんから「運営が厳しい」と相談を受けたことから、サシコギャルズプロジェクトが立ち上がりました。 プロジェクトとして可能性を感じたのは、クオンで扱っている刺し子のアイテムは海外で評判がとてもよかったからです。「やり方や見せ方を変えれば、大槌刺し子はまだまだ伸びるだろう」と思いました。
ープロジェクト名「サシコギャルズ」の由来を教えてください。 大槌にある事務所で刺し子を行っているのですが、職人さんたちが集まったらまず世間話がはじまるんです。お菓子や手料理を持ってきて、それぞれの近況をひとしきり話して。その姿を見て、放課後、教室やファミレスに集まって喋る女子高生に通じるものを感じました。 「ギャル」という言葉には賛否両論あるかもしれませんが、私としては“ギャル=ポジティブな人”というイメージがあり、そのまま採用することにしました。「サシコギャルズに決めた」と伝えても、最初は誰も信じてくれませんでしたが、今は皆さんとても気に入ってくれています。