8強出そろった今年の夏、甲子園100周年に相応しい名カードばかり!ここまでのベストゲーム5試合を紹介!【主筆・河嶋宗一コラム『グラカンvol.32』】
③ 大会5日目第3試合 大社(島根)3-1報徳学園(兵庫)
大社がセンバツ準優勝の報徳学園を破ったこの試合。大社の気迫が報徳学園を上回りました。1回表に今朝丸 裕喜投手(3年)から2点を先制。立ち上がりに課題がある今朝丸投手ですが、常時140キロ中盤の速球を投げ込んでいて、勢いは非常によく、簡単に打てない投手です。7回にも1点を追加し、3対0とします。 エース左腕・馬庭 優太投手(3年)が報徳学園を抑え、完封ペース。9回に適時打で1点を失いますが、逃げ切って完投勝利。大金星を挙げました。この試合が大社旋風の幕開けとなりました。
④ 大会9日目第4試合 大社(島根)5-4創成館(長崎)
報徳学園を破った大社が、ベスト16入りした一戦。この試合も野球の面白さが詰まっていました。機動力に自信がある創成館はランナー二塁の場面でヒットが出れば、1本で還ることにこだわっていました。三塁コーチャーの永仮 琢馬内野手(3年)は次のように語ります。 「大社の島根大会を見直すと、中継プレーが甘かった。またうちのレギュラーはみんな足が速いので、ランナー二塁でヒットが出れば迷わず回しました」 3回裏に左前適時打で1点を先制。同点に追いつかれたあとも6回裏に2点を勝ち越し、創成館ペースで試合が動いていました。しかし8回表、大社はスクイズなどで同点に追いつきます。10回表にエラーとセーフティスクイズで2点を勝ち越し、10回裏、創成館の反撃を1点に抑え、夏2勝目を挙げました。敗れた創成館は鍛え抜かれた守備、緻密な走塁をみせ、大社を追い込んでおり、見応えのある試合でした。
⑤ 第11日目第4試合 大社(島根)3vs2早稲田実業(西東京)
伝説とも呼べる試合になりました。大社の快進撃により、三塁側のアルプスは満員。内野席、レフトスタンドも大社を後押しする雰囲気でした。試合は大社が1点を先制しましたが、6回表に早稲田実業は一死満塁から内野ゴロで同点。 7回表にエラーで勝ち越しに成功しましたが、追加点を奪えず、8、9回に無得点に終わったことで勢いが生まれ、大社は9回裏に同点。そして一死二、三塁の場面で早稲田実業は途中出場のレフト・西村 悟志内野手(1年)が投手の横を守る「内野5人シフト」を敷いて、甲子園は騒然となりました。結果として西村選手のもとに打球が転がり、「左ゴロ」。三塁走者が本塁に突っ込んで、アウトとなり、延長戦になりました。 延長戦になってからは大社の絶妙なバント攻撃が光り、最後はエースの馬庭投手がサヨナラ打を放ち、激戦を終えました。試合後、両チームを称える拍手が起こっていました。早稲田実業の和泉実監督は「60歳を過ぎてこんな試合ができてとても幸せです。甲子園のナイターは美しいよ!」と涙を流しながら、両校の選手たちの戦いを称えていました。 試合後の取材が終わり、知り合いの記者からは「こんな試合はなかなかないね。伝説になったよ」という感想が聞かれました。 今年は甲子園のバックスクリーンにある電光掲示板は過去の名試合を振り返ったCMが流れていますが、それに負けない試合だったといえます。 3回戦までの41試合が終わったばかりですが、濃密な試合ばかりです。これから迎える準々決勝から決勝戦まで7試合はどんな試合になるのか。来週のグラカンでも、今年の甲子園についての話題を紹介できればと思います。 *『主筆・河嶋宗一コラム グラカン!』は毎週日曜配信します。