<きみの色>山田尚子監督インタビュー(1) 今の子供たちの思春期を「焼き付けたい」 人のせいにしない、自分の人生に責任を持つ強さ
「音楽」と掛け合う、もう一つのテーマが「青春」。3人の高校生を主人公としたのは、山田監督がこの年代に強くひかれるものがあったからだという。
「精神的にも身体的にも大人になる途中で、まだまだこれから“初めて”もたくさんある年頃の二次性徴にすごく興味があって、とても魅力的に感じていたテーマでした。この年代に出会った人や好きになったものって、大人になってもずっと大事なものとして残っていると思うので、それを焼き付けたいというか。作品の中で、彼女、彼らに経験してもらうことで、焼き付けたいという思いがありました」
◇「自分の状況を人のせいにしない子たちを描きたい」
「きみの色」で山田監督が描こうとしたのは、現代を生きる思春期の子供たちだった。同作の企画書でも「思春期の鋭すぎる感受性はいつの時代も変わらずですが、すこしずつ変化していると感じるのは『社会性』の捉え方かと思います。すこし前は『空気を読む』『読まない』『読めない』みたいなことでしたが、今はもっと細分化してレイヤーが増えていて、若い人ほどよく考えているな、と思うことが多いです」とつづっている。
「私には、中学生、高校生になるおいっ子がいるのですが、言葉の選び方も上手だし、人との距離の取り方にも失敗がなさそうな感じがあるんです。現実世界以外でも、SNSの世界、ネットゲームの世界でたくさんの自分の人格を持って生きているけど、どこか薄暗い部分があるわけでもなく、『どうやってこの人たちは自我を保てているのかな』と思って観察していた時期があるんです。もちろん、たくさん悩みはあると思うのですが、何とか保っているような気がするというか」
一見器用にも見える子供たちも悩みや葛藤を抱えていて、ある時、耐えられなくなって爆発してしまうこともあるのではないか。山田監督は「そうあってほしい」とも語り、そうした子供たちの“強さ”を表現しようとした。
「今回作品の大きな軸としたのは、『自分の状況を人のせいにしない子たちを描きたい』ということ。大人もそうですし、皆さんが責任を持って自分の人生を生きようとしている強さを大事に描きたいなと思いました。人のせいにするのは簡単だと思うのですが、そうではなく、ちゃんと自分の問題として受け止める人たちを描きたくて。ただ、それは本人だけの問題なので、横で見ていると痛々しかったり、もっと助けてあげたい、もっと頼ってほしいと思ったりする。そうした心のやり取り、動きを描いてみたいと思いました」