「何かやらなきゃ…」と思うけど「疲れて何もできずに、自己嫌悪になる」とき、心を守る考え方
「自分は何も持っていない」「いつも他人を妬んでしまう」「毎日がつまらない」――誰しも一度は感じたことのある、やり場のない鬱屈した思い。そんな感情に寄り添ってくれるのが、クリープハイプ・尾崎世界観氏も推薦する『ぼくにはなにもない 愛蔵版』。この記事では、著者の齋藤真行氏に教えてもらった「ネガティブな気持ちを解消する方法」を紹介する。(構成/ダイヤモンド社・林拓馬) ● 最初のハードルが高すぎる 「何かやらなければいけない」と思いながらも、「疲れていたり面倒くさくて、結局行動に移せない」のは、多くの人が抱える共通の課題だと思います。 その原因として考えられるのは、「最初の一歩のハードルが高すぎる」ことです。 たとえば「早起き」には多くの人が挑戦するものの、三日坊主で終わるケースが非常に多いです。 授業がない時、午前9時頃に起きている大学生が、急に5時や6時に起きようという目標を設定したとします。 最初の1~2日は頑張って実行できたとしても、「反動」がきて続けられなくなることがほとんどです。 この反動は、「無理して大きな変化を一気に取り入れた」ときに必ず起こります。 人間も同じパターンを好む慣性のある生き物なので、急激な変化はストレスや疲労を生み、もとに戻ろうとする「揺り戻し」が起こります。 それが大きいものほど、続けることが難しくなります。 そのため、このような挑戦は往々にして失敗に終わってしまいます。 ● 「グラデーション」で考える そこで有効なのが、「グラデーション」の考え方です。 たとえば、普段8時に起きている人であれば、まずは7時半に起きることから始めてみる。 その新しいリズムに体が慣れてきたら、さらに7時に、そしてまた6時半にといった具合に、少しずつ段階を踏んで進めていく方法です。 徐々に変化させることで、反動に悩まされにくくなり、習慣を形成しやすくなります。 重要なのは、変化のペースを自分の中で柔軟に修正できるようにすることです。 6時に起きることに慣れてきたとしても、どうしても疲れてしまい、起きるのが遅くなってしまう日もあるでしょう。 そんなとき深刻に考え過ぎず、「また明日から戻そう」と柔軟に修正して継続することが大切です。 失敗しても大きく落ち込まず、それも変化の過程の一部として受け入れて次につなげていく考え方が、結果として継続につながります。 ● 「0か1か」ではなく「0から100」 特に何か新しい習慣を作ろうとする際には、最初の一歩をいかに低いハードルに設定できるかが鍵です。 読書を習慣にしたいという場合、いきなり毎日1冊読むことを目標にするのではなく、最初は1日1ページだけ読む、あるいはたった5分だけ本を開くといった、少し意識すればできる簡単な行動から始めることが効果的です。 低いハードルでも、越えられれば達成感を得て、次の一歩に進む原動力になります。 こうした変化への取り組みは「デジタル的」な発想ではなく、「曲線的」「グラデーション的」な視点です。 デジタル的とは、0か1か、成功か失敗かといった二元論的な考え方を指しますが、それに縛られてしまうと、少しの失敗で反動を受けて、挫折してしまう恐れがあります。 一方で、「曲線的」「グラデーション」的な発想では、「0から100まで」の多くの色合いとニュアンスの変化のなか、進捗をゆっくりとした連続的な変化として捉えます。 多少の後退があったとしても、全体的には前に進んでいるという感覚を持つことで、よりポジティブに取り組むことができます。 ● 人生を緩やかに歩いて行く 私自身も、これまで直線的な考え方にとらわれて失敗してきた経験がたくさんあります。 最近ではこうした「グラデーション」を意識するようになり、物事を柔軟に少しずつ変えていくアプローチを取り入れるようになりました。 この考え方は、習慣形成だけでなく、人生全般においても有効だと感じています。 何かを「やらなければ」と思うとき、その初めの一歩をいかに低く設定して、その後の継続へと持っていくか、が極めて重要です。 一歩一歩を着実に積み重ねていくことで、自然と目標に向かって進む習慣を作っていくことができます。 緩やかな変化を生活に少しずつ、時間をかけて、一進一退しながら取り入れることで、疲れや反動に押しつぶされることなく、新しい挑戦を成功させることができるでしょう。 (本記事は『ぼくにはなにもない 愛蔵版』の著者、齋藤真行氏が特別に書き下ろしたものです)
齋藤真行/さいとう れい