公平性を欠いたJ昇格スタジアム問題
一発勝負のJ昇格戦は、スタジアム問題で公平性を欠いていた。 Jリーグは2012年からJ2の1位と2位がJ1へ自動昇格し、3位から6位までの最大4クラブがトーナメント方式で激突して、勝者が3枚目のJ1切符を獲得する方式を導入した。 まず3位と6位、4位と5位のクラブが成績上位のホームで一発勝負の準決勝を戦う。続いて、勝者同士が今度は中立地で、同じく一発勝負を繰り広げる。 しかし、4回目となる今年の決勝会場は4位でプレーオフに挑むC大阪のホームとなった。実際、決勝戦へ向けてC大阪のある選手はこんな言葉を残していた。 「次はホームのような雰囲気でできるので、サポーターの後押しを受けて勝ちたい」 公平性を欠く事態が生まれた理由は、建て替え工事中の国立競技場にある。最初の2回の決勝は国立競技場が舞台となったが、数多くのファンやサポーターを集められる中立地は現時点では存在しない。 昨年は味の素スタジアムで、モンテディオ山形がジェフ千葉を下した。もっとも、ホームとする東京ヴェルディが20位に終わったために会場は問題視されなかった。 決勝の入場料収入は主管するJリーグに入る。決勝を貴重な収入源のひとつとするために、Jリーグは入場可能数が2万人以上であることを念頭に置き、全国から今年の決勝の開催希望を募った。その際には、こんな条件が設けられている。 【1】J1で使用しないスタジアムであること。 【2】J2・J3入れ替え戦が同日に開催できること 【3】スタジアムへのアクセス、立地、試合開催時の気象など たとえば【1】に関しては、12月第1週の週末にJリーグチャンピオンシップ決勝第2戦、J1昇格プレーオフ決勝が続けて行われる関係で、芝生の保護を理由にJ1クラブのホームが除外された。そこに【2】と【3】が加われば、現実問題として選択肢は大きく限られる。 こうした状況からヤンマースタジアム長居が候補となり、さかのぼること3月中旬の実行委員会と理事会で満場一致で決定・承認されていた。実行委員は各クラブの代表取締役が務める。決して低くない確率で起こる、C大阪がプレーオフ決勝をホームで戦う事態をクラブのトップが認めていたことになる。 ならば数ヶ月も前から決まっていたことを嘆き、不満を漏らしたところで何も変わらない。福岡は、敵地のハンディを考えた上で準備に入った。元日本代表主将まで務めた井原監督は、紅白戦において主力組に通常の「3‐4‐2‐1」だけでなく、より攻撃を重視した「4‐1‐3‐2」も入念に実戦を積ませた。 「ビハインドとなった状態を想定させました。セレッソとは今年2戦2勝ですけど、内容は非常に厳しいものがあった。監督が代わったことで、いままでとは違う部分も出てくるのではないかと」 予想通り、残り1試合で監督交代のカンフル剤を打ったC大阪は、開き直ったかのように球際で一歩も引かない闘志と前へのプレッシャーで福岡を苦しる。後半15分にはカウンターからFW玉田圭司が先制弾を決めて、桜色に染まったゴール裏を狂喜乱舞させた。 リードを奪われるのは9月20日のコンサドーレ札幌戦以来、実に12試合ぶりとなる。それでも福岡の選手が浮き足立たなかったのは、あらゆる状況に備えて入念な準備を積んできたからだ。 ベンチ前から何度も「慌てなくていいぞ」と指示を飛ばした井原監督は、想定していた試合展開のひとつだったと強調する。 「(リードされたら)最後の10分は2トップで行こうと前もって話していた。4バックにする前に、3バックのまま前線を2トップとトップ下という形に変えて、流れを少しずつ引き寄せることでプレッシャーをかけられるようになった。我々スタッフも慌てなかったし、選手たちも我々を信じてくれた」