公平性を欠いたJ昇格スタジアム問題
開幕前のキャンプから、3バックと4バックの併用を目指してきた。京都サンガとの開幕戦、愛媛FCとの2戦目を4バックで落とすと、続く札幌戦から3バックに切り替える。 後半終了間際に献上したミス絡みの失点で3連敗を喫して最下位に転落したが、3バックが見せた粘り強い守備に手応えを感じていたのだろう。 当面は3バックで負けないサッカーを貫き、チームに自信を植えつける戦略を描き直した井原監督は、選手たちにこんな言葉をかけて笑わせている。 「いまの順位よりも下はないから」 3バックでは右ワイドを、4バックでは右サイドバックを務め、プレーオフ決勝では後者として劇的な同点弾を叩き込んだ副キャプテンの中村北斗が、指揮官の泰然自若とした背中を頼もしげに見つめる。 「いままで経験してきたことが違いますよね。まったくビビらないし、だからこそ僕たちもリラックスできる。監督のもとで、そういうメンタルの部分で成長しているのかなと思う」 3バックで11戦連続無敗を達成して上位戦線へ食い込み、同時進行で4バックも熟成させる。迎えた8月15日。4バックで磐田に挑み、2対0で快勝した時点で、井原監督はJ1昇格を確信したという。 「もちろん誰にも言っていないことですけど、密かに頭のなかに描くくらいの手応えをつかんで、そこから2つのシステムをさらに上手く使い分けるようにしました。プレッシャーの度合いは違いますけど、ただワールドカップ出場といったものに比べればまだまだと思って、自分はやっているので」 Jリーグの村井満チェアマンは試合後、決勝戦のスタジアム選考に関して再考すると明言した。準決勝同様にリーグ戦の上位クラブのスタジアムで開催する対案があるが、降雪地域のクラブが勝ち進んだ場合、今度は気象問題が頭をもたげてくる。 新国立競技場が完成するまで、この問題はJリーグを悩ませ続けるだろう。それだけに、図らずもアウェーとなった大一番で先制をも許す二重のプレッシャーを跳ね飛ばした井原監督の采配は、3位のクラブが初めて順当に昇格したことを含めて、痛快無比な軌跡をJリーグの歴史に残してくれた。 (文責・藤江直人/スポーツライター)