【復刻掲載】「石破 茂、プラモを語る!」 2007年の週プレ独占インタビューを再掲載!
■プラモデル接待は日本の危機も救う⁉ ――ところで、プラモを通して兵器を理解するってことはありえますか? 「あるよ。例えば、90式戦車(※1990年に採用された陸自の主力戦車。実戦経験はないが、米国の軍事専門誌での世界戦車ランキングで3位獲得の実力車)のプラモデルを作ることで、一般の人は『こんな狭いところに3人も乗るのか』と驚くことがあると思います。それもプラモの効用のひとつです。しかし同時に、私は『なぜ3人乗りなんだ⁉』と考えるのですね。日本の戦車は人員不足で弾の装援を自動化した結果、3人乗りに。でも、世界の戦車はほとんどが4人乗りなのです」 ――自動装填だし、3人で十分なんじゃないですか? 「いや、4人乗りなら2名戦死しても戦える。ところが3人乗りだと、2名ダウンしたら残り1名では戦えないんですね。プラモを通して、そういうことを考えられるんです。 ちなみに、私はどこの国へ行ってもなるべく多く戦車や戦闘機に乗ることを心がけています。もちろん自衛隊のF15やF2戦闘機にも乗りました。なぜなら、戦車や戦闘機に乗ることで、その国の軍事的な思想や開発理念がよくわかるからです。人間と違って、兵器はウソをつかないんです。そして防衛大臣としては、戦車に乗って『スゴイ!』『なにコレ?』と驚いてるだけではマズイんです。軍事を統制する者は兵器を理解していなければならないと確信しています」 ――なるほど! プラモデル作りが国防にもシッカリ役立ってるんですね!! 「防衛の仕事に就いて、思わぬところでプラモデルで培った知識が生きていると感じます。作品を作るために『タミヤニュース』や『丸』など専門誌をいっぱい読み込みましたからね。プラモデルを作ることで、その兵器のイメージができて、運用方法を理解することができるんです」 ――ひょっとして、そのほかにもプラモが大活躍のケースがあったりして? 「以前、防衛庁長官時代のこと。ロシアの国防大臣が来日することになって、当時の長官室に来られるという時に、長官室に展示されていたプラモデルが問題になったのです」 ――ま、まさか。日本海海戦のジオラマとか⁉ 『皇国の荒廃、このプラモにあり』な大事件で国際問題に発展⁉ 「いえいえ。でも、当時は海自や米軍の艦船ばかり飾ってあったわけで、さすがにロシアの国防大臣の前でこれはマズイだろうと(笑)。で、ロシアの戦艦のプラモを展示しようと思ったんだけど、日本にはまったくない。その時、訪ロの際にモスクワ日本大使館の駐在武官にもらったプラモがあったということで、いくつかの中からやっぱり空母だよねと、『アドミラル・クズネツォフ』を選びました」 ――す、すごい。『亡国のイージス』の仙石先任伍長(※『亡国のイージス』(福井晴敏著)の主人公。テロリストに占拠されたイージス艦を救った海自のヒーロー)に匹敵する大活躍で日本のピンチを救いましたね。 「いや、ここからがさらに大変で。たった2日しかないのに何色に塗っていいのかもわからない。でも、必死で専門誌をめくってカラーリングを見つけて、2日徹夜してなんとか完成させた。これにはロシアの国防大臣も喜んでくれた。『日本の防衛責任者に会いに行ったら楽しかった』と思ってもらえるだけでうれしいですよね。プラモは接待の小道具にもなるんですよ(笑)」