日本の評価を落とす「薄っぺらい商売」…観光地で「日本人が食べたことがないメニュー」を提供する歪さ
外食産業専門コンサルタントの永田ラッパと申します。「日刊SPA!」では、これまで30年間のコンサルタント実績をもとに、独自の視点から「食にまつわる話題」を分析した記事をお届けしていきたいと思います。今回のテーマは、「インバウンド向けの外食・中食産業」です。
インバウンドを意識するのは良いのだが…
新型コロナウイルスの影響で激減していた訪日外国人の数も、2022年ごろから回復傾向にあり、インバウンドビジネスも好調のようです。とくに日本の食べ物は外国人に人気があり、インバウンド向けに展開している日本の外食・中食産業も好調を維持しています。 多くの外国人が日本の食文化に触れ、それを満喫してくれるのは私たちにとっても嬉しいことです。しかし日本の食を提供する側の飲食店などの動きを見ていると「それでいいのか?」と、疑問に感じることもあります。 外国人に人気の日本の食スポットは、東京ならば豊洲千客万来や築地場外市場、大阪ならば黒門市場、京都なら錦市場などがあります。どこもインバウンドを意識しているのですが、何か勘違いをしてはいないかと感じることがあるのです。
「千客万来と築地場外市場」で外国人客の表情が全然違う
先日、豊洲千客万来に行ってみたのですが、楽しそうにしている外国人客がほとんどいないという印象を受けました。例えば3階はフードコートになっていますが、買ってきたものをそこで食べている人よりも、疲れた顔で休憩している人のほうが圧倒的に多かったのです。そしてそのあと、今度は築地場外市場に行ってみました。するとそこにいる外国人客の多くはとても楽しそうにしていたのです。この差は何でしょうか? また、京都の錦市場に来ている外国人がとても楽しそうにしていたのに比べて、大阪の黒門市場に来ている外国人はそうでもない……。そんな印象でした。一体それはなぜなのでしょうか。
ニーズに応えていないインバウンドビジネス
一番重要なのは、お客さんが楽しんでいるかどうか、ということです。飲食業に限らず、サービス業に携わる者は、お客さんが何を望んでいるか、どうすれば楽しんでもらえるかということを大切に考えなくてはなりません。 私たちも外国へ行ったときは「せっかく来たのだから」と、そこでしか味わえないもの、その土地ならではのものを食べたいと思います。来日する外国人の多くもそれと同様に、日本の歴史や文化に触れたいと思っています。食についても、いままで知らなかった日本の伝統的な家庭料理や屋台料理を味わいたいと思ってやってくるのです。 ところが昨今のインバウンド向けの飲食店のメニューを見ると、串に刺さった鰻の上に牛肉やウニやイクラがのっかっている……といったような、日本人すら食べたことがないようなものを提供しているところが多いのです。それは果たしてお客さんの立場に立ったものなのでしょうか。外国から来たお客さんに、それが日本の伝統食などと思われてしまっても困るというものでしょう。