日本の評価を落とす「薄っぺらい商売」…観光地で「日本人が食べたことがないメニュー」を提供する歪さ
「外国人が本当に触れたかった日本食」は簡単なものが多い
価格を上げるために、日本人が食べたこともないようなものを作って提供する。そこからヒット商品が生まれる可能性は否定しません。しかしそれは外国のお客さんで“実験”するべきではありません。 私は高価格のものを提供すること自体を否定するつもりはありません。しかし鰻に牛肉をのせてインバウン丼……などという名称で提供するような、安っぽい小手先のものであってはならないでしょう。 ではどんなものならばいいのか。例えば、日本人も憧れる神戸牛などの和牛。それがステーキでもすき焼きでも楽しめる、和牛の楽しみ方がすべて詰まったゴージャスなコースを設けるのです。そして「これは日本人にとっても贅の限りを尽くした和牛コースです。せっかくいらしたのですから日本の和牛料理を存分にお楽しみください」と、客単価1万円のお店が2万円で提供するというのは、私はアリだと思っています。 またこの1~2年で、日本に来た外国人にとって満足度の高い日本食は、ネットなどからもある傾向をつかむことができます。それは意外にも簡単なものが多いのです。寿司や刺身、鰻はもともと人気がありましたが、トンカツ、ジャパニーズカレー、煮魚、クリームコロッケなどは最近、外国人の評価が高まっています。こういったことをしっかり調べれば、奇をてらうことなく、ニーズに応えることはできるのです。
日本の価値を下げる「浅はかなインバウンドビジネス」
「せっかく日本に来たのだから」というお客さんの動機に寄り添うことをせず、「売れるから」というだけで日本人が食べたこともないものを提供する点に、いまのインバウンドビジネスの薄っぺらさを感じずにはいられません。 前出の豊洲千客万来と築地場外市場、黒門市場と錦市場。なぜお客さんの笑顔に差が生まれてしまうのか。例えば築地場外市場には古くからやっている老舗の寿司店や惣菜店があります。そういうところは昔から変わらない本質的なビジネスでインバウンドに向き合っています。 錦市場は近くに祇園や四条河原町などがあり、エリア全体が観光地になっています。錦市場はその中の“ワンシーン”であり、お客さんにとってのウェイトは小さいのかもしれません。お祭り感覚で錦市場の屋台グルメを味わい、昼食や夕食は別のところですませているというケースもあり、それで差別化ができているのでしょう。 自分たちはどんな環境でどんなビジネスでお客さんのニーズを満たしているのか、もっとしっかりと考えて取り組む必要があります。浅はかなインバウンドビジネスでは、かえって海外での日本の評価を落としてしまいかねないと危惧しています。 <TEXT/永田ラッパ> 【永田ラッパ】 1993年創業の外食産業専門コンサルタント会社:株式会社ブグラーマネージメント代表取締役。これまで19か国延べ11,000店舗のコンサルタント実績。外食産業YouTube『永田ラッパ~食事を楽しく幸せに~』も好評配信中。
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