海外不動産に投資した日本人の本音…日本ではありえない「魅力」と、日本では考えられない「リスク」
エリート会社員が経験したマレーシア投資の「大誤算」
また海外不動産には日本とは違う難しさがあると言う。「まず契約の確認が難しい。記載内容が適切か否かもだが、記載すべきことがしっかり記載されているかなどの確認も現地の弁護士を交えて検討する必要がある。また、われわれが現地に常にいるわけではないので物件の現状把握が難しい」。 契約が日本以上に重視され、また自分にとってなじみが薄い国で、そこに不備やトラブルがあれば、対応の難易度は格段に高くなる。 それでも富裕層ならではの人や情報のつながり、そして豊富な資金力もあって、この人物は大きなトラブルもなく海外不動産投資から安定した利益を得ることができている。 では、そこまでの特別な背景のない投資家は海外不動産をどう見ているのだろうか。 大手企業に勤める40代のサラリーマンが、10年ほど前にマレーシア最南端ジョホール州にマンションの一室を購入したのは、「自宅の購入後に余った資金をどうするか考え、もともと不動産が好きだったこともあって海外不動産に興味を持った」からだった。 インターネットなどで情報収集したところ、「ジョホールバルはシンガポールからすぐ近くという立地の良さが魅力で、中国企業も巨額の投資をして不動産開発を進めている」ことを知った。「高速鉄道が通る計画があるとの情報もあり、もしシンガポール並みに発展すればすごいことになるのではないかと思った」 確かにジョホール州では、中国最大手の不動産会社「碧桂園(カントリーガーデン)」が約15兆円を投じて、人工島に数十のタワマンやオフィスビル、商業施設などを建設する「フォレストシティー」という超巨大プロジェクトを14年に開始。シンガポールの発展を支える労働力を供給するマレーシア南部の開発は大きな注目を集めていたため、投資資金の1600万円が大きなリターンをもたらしてくれると期待したと言う。 「だが、実際には投資したマンションが建つまで8年かかった」。彼が購入したのはフォレストシティーのマンションではないが、一時は建物が完成しないまま計画が頓挫するのではないかと心配したと言う。「建つ前に支払いをすると割引があるシステムだったので、現地でローンを組んで支払いを済ませていた」 それでもマンションが建ってからは、仲介業者である日本の不動産会社が「細かくケアしてくれる」こともあり、問題なく家賃収入を得ることができている。「購入から10年ほどたって、いま売れば『トントン』くらいの状況だ」 この人物の場合、購入の契約やローンを組む際のやりとりも「不動産会社が大部分をやってくれたので、海外だからといってそれほど難しいとは感じなかった」と話す。「日本の不動産とは違うのは、大使館に手続きに行かなければならなかったことくらい」 だが建設の大幅な遅れや、高速鉄道の計画が不透明になったことなど、海外ならではの事情に振り回された面は否めない。