「砂糖の代用品」が心臓発作と脳卒中のリスクを高める可能性【最新研究】
<「一般に安全と認められている」成分として分類されているが、再評価する必要性も>
一般的な砂糖の代用品が心臓発作と脳卒中のリスクを高める可能性があることが「動脈硬化・血栓形成および血管生物学(The Journal Arteriosclerosis, Thrombosis and Vascular Biology」誌の最新論文で指摘されている。 【関連動画】エリスリトールの安全性に関する最新情報 「エリスリトールを含む食品や飲料の標準的な摂取量が、血栓形成を直接的に引き起こす可能性がある」と、クリーブランド・クリニックの心不全および心臓移植医療部主任研究員であり、本研究の共同執筆者でもあるW.H.ウィルソン・タン医師は述べる。 したがって人工甘味料のエリスリトールは、これまで考えられていたほどに安全ではない可能性があり、その安全性を再評価する必要性を指摘する。 エリスリトールは砂糖の7割の甘さを持ちながらもカロリーはわずかその6%。炭酸飲料、乳製品、ステビア甘味料などさまざまな食品や飲料の砂糖の代用品として一般的に使用されている、低カロリーの甘味料だ。 果物や野菜にも自然に含まれており、人体内でもグルコースの分解過程でわずかな量が生成される。摂取後に大部分は尿として排出されるが、体内に蓄積する可能性がある。 アメリカ食品医薬品局(FDA)と欧州食品安全機関(EFSA)は、エリスリトールを「一般に安全と認められている」成分として分類しており、食品や飲料に自由に使用できる。しかし、最新研究に基づいて再評価が必要かもしれないと研究者らは指摘する。 エリスリトールを含む食品を摂取した健康な人々の血中のエリスリトールレベルが、摂取しなかった人々と比べて1000倍以上増加することが判明。また、エリスリトールの摂取後に血栓形成が著しく増加したことも明らかになった。 血栓は傷の治癒に不可欠だが、体の重要な部分への血流が妨げられると、心臓発作や脳卒中を引き起こす可能性がある。 本研究は昨年発表された研究に続くもので、他の研究でも、一般的に使用される他の人工甘味料からさまざまな健康への影響が見つかっている。 アスパルテームは2型糖尿病、肥満、気分障害、ホルモンの乱れ、空間記憶などに影響を与えることが確認されており、スクラロースは腸細胞の損傷に関連している。 「多くの自然および合成の低カロリーの甘味料があり、それぞれが独自の化学構造を持っています。低カロリー甘味料が体内の細胞と異なる方法で相互作用する可能性があり、その結果として影響を与えるのです」と、サウスカロライナ大学のリンジー・シャイアー教授は本誌に語っている。 また、キシリトールも最近、血栓形成に影響を与え、心臓発作や脳卒中のリスクを高めることが同じ研究チームによって判明した。 「心臓病は世界的にも死因のトップに入っています。私たちが口にする食品が隠れた要因にならないようにしなければなりません」とクリーブランド・クリニック・ラーナー研究所の心血管および代謝科部長で共同執筆者のスタンリー・ヘイゼン医師は語る。 エリスリトールの影響についてさらなる研究が必要であり、安全性について再評価する必要があるかもしれないと本研究は結論づけている。 【参考文献】 Witkowski, M., Wilcox, J., Province, V., Wang, Z., Nemet, I., Tang, W. H. W., & Hazen, S. L. (2024). <Ingestion of the Non-Nutritive Sweetener Erythritol, but Not Glucose, Enhances Platelet Reactivity and Thrombosis Potential in Healthy Volunteers. Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology.
ジェス・トムソン(本誌科学担当)