卒業式前日に教員から性被害を受けた女性。「普通の学生生活を過ごしたかった」
札幌市出身の写真家石田郁子さん(47)は、中学時代に慕っていた男性教員から受けた性被害の経験について、実名で取材を受けている。まだ恋愛経験や性の知識があまりなかった当時は「好きだから」と行為を正当化する教員を拒否できなかった。先生が悪いことをするはずがないと思っていた。 【写真】「まさか」重度障害の娘のおむつに、500円玉大の血が付着。驚いて陰部を確認すると… 「あの事件の後、娘は変わってしまいました」
石田さんは教員による性暴力をこう断罪する。「恋愛対象に見えたとしても、先生は子どもを守る立場で絶対に許されない。子どもにどんな残酷な影響を与えるか考えていない自分勝手な犯罪行為だ」 今年6月、子どもに接する仕事に就く人の性犯罪歴を確認する制度「日本版DBS」の創設法が成立した。石田さんは「一発アウトというメッセージになった」と期待を寄せつつも、対象となる職種や犯罪をもっと広げてほしいと考える。自分と同じ思いをする人が、これ以上増えてほしくないと強く願う。(共同通信=稲本康平) ▽不意打ち それは中学校の卒業式の前日だった。美術教員の男性から「美術展のタダ券があるから」と誘われ、ついて行った。冗談を明るく返してくれ、面白い先生だという印象を持っていた。観覧後、車で連れて行かれたのは駅ではなく、相手の自宅。その時思ったのは「私がおなかが痛いと話していたので、休ませてくれるのかな」。先生は保護者のように安心できる存在だった。
作ってもらった温かいうどんを食べ、一緒に画集を見終えて雑談をしていると、いきなり口が近づいてきた。最初はスローモーションのように感じた。何もしないと口がつく。とっさに手で押しのける。「冗談だと笑うんだろう」。最後まで信頼していたが、相手は「好きなんだ」と言って一方的にキスをしてきた。不意打ちだった。恐怖や嫌悪感を含め何も感じなかった。ただ、起きたことを受け止め切れなかったのか、過呼吸になった。 卒業後、呼び方は名字から「郁子ちゃん」に変わり、休日も呼び出された。美術準備室の床に敷いた段ボールの上で、キスされ、胸を触られた。「愛している」と言われると、先生は悪いことをしようとしているわけではない気がする。性被害だと疑うことはなかった。 高校生になって性的な行為はエスカレートしていった。シルバーや白の車で海水浴場や、山登りに連れて行かれ、その先でも被害を受けた。自分とって爽やかなイメージがあったものが、嫌な思い出として残った。