卒業式前日に教員から性被害を受けた女性。「普通の学生生活を過ごしたかった」
「結局どれも、私がしたかったことじゃない。もう判断できない。それがどういうことかも分からない。でも愛していると言うから、せざるを得なかった」 相手と会う前は「今日は何が起こるんだろう?」とどんよりした気持ちだった。おしゃれをしてとか、楽しみというのではない。「人間は嫌だって思い続けたら生きていけないから、私の場合はまひしたんです」。性被害は大学2年の19歳まで5年間続いた。 ▽不調 親や友人に言えないことをしている自分に罪悪感を持ち続けてきた。性被害を受けた当時は、絵をたくさん描くことで、あえて学生らしい振る舞いをしていた。「自分の人生を壊されたと考えるとつらいから、そうは捉えない。でも被害がなかったら、楽しく普通の学生時代を過ごせたかもしれない。もっと生きやすかったかな」とやるせなさをにじませる。 精神的な混乱で体調不良にさいなまれた。高校では休み時間も同級生らと話さず、被害のことを考えないよう勉強に没頭した。アトピーを発症し、胃腸の不調も続いた。
大人になってからも人との距離感が分からなくなり、30代半ばごろまで、異性との接し方、恋愛や性的なことに対する自分の価値観で悩み続けた。「被害が自分の人生に長く、大きく影響してきたと思うと本当に悔しい」 ▽訴え 転機となったのは2015年5月に傍聴した裁判だ。養護施設に通う少女に、職員が性的行為をした事件だった。少女と被害当時の石田さんの年齢が同じで、施設職員も「恋愛だった」と弁解。自分が受けたのは性被害だったと認識した。 「悪いことをした人が先生をしているのはおかしい」。その年の12月、教員を訪ねた。相手は、自分の行為が石田さんの人生に及ぼした影響について謝罪の言葉を口にしたが、こうも言った。「悪いことと分かっていたが後悔したくなかった」 石田さんには到底、受け入れられなかった。「好きだからというのは、私にとって言い訳であって、当時の私の人格や意思を無視した行動は許せない」