卒業式前日に教員から性被害を受けた女性。「普通の学生生活を過ごしたかった」
その後の民事訴訟で、再会時に石田さんが録音した音声が証拠となり、2020年12月の東京高裁判決は性的な行為があったと認定。相手は懲戒免職処分となった。 裁判の後、心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断され、記憶のフラッシュバックに数年間苦しんだ。ずっと自分を否定し続けてきた。自傷行為に至ったこともある。「屈折してよくここまで戻って来られたというのが正直なところだ」 相手の懲戒免職が決まってから症状は完全に治まった。現在はフリーのカメラマンとして、学生の行事やスポーツを撮影。各地に遠征した際に集めているご当地のキーホルダーの話では、笑顔があふれていた。前向きに日々を送っている。 実名と顔を隠すことなく、被害を社会に訴えた石田さん。周囲から「なぜ今更」と冷たい言葉もかけられたが、被害を世に知らせたいと強く思った。 石田さんは、教員と生徒という関係の中で性被害が起きた場合、弁護士ら外部人材による第三者委員会の調査が必須だと考える。「発覚しても教育委員会や学校が適切に対応せず、加害教員が教育現場に居続けている」 ▽取り組み
自身の被害を踏まえ、教員の性暴力を社会に問い続けてきた。2020年に2度アンケートを実施し、性暴力被害に遭った人の声を集めた。2023年には子どもへの性暴力防止に取り組む団体「Be Brave Japan」も設立した。 今年6月に成立した日本版DBS創設法を巡っても、より厳しく取り締まるよう要望書を政府に提出した。 制度では、学校や保育園、幼稚園などに、仕事に就く人の性犯罪歴の確認を義務づけ、学習塾やスポーツクラブなど民間事業者は国の「認定制」となっている。 石田さんにとっては、評価できることと改善してほしい点がある。まず大きく評価できるのは、雇用主側に、今後採用する人だけでなく、現職についても犯歴の確認が義務づけられている点だ。一方で、懲戒免職や、示談によって不起訴となったケースなどが対象の犯歴に含まれていないことについては「このままでは中途半端な法律で終わってしまうので、さらに拡大してほしい」と話す。政府は施行から3年後に見直すとしており、大きく改正されることを期待している。
より実効性が高まり、自分と同じような被害者が出ないことを心から祈っている。