ノーベル文学賞授賞式を前に、日本でも盛り上がる韓国文学……「この世界はよりよい場所に変えられる」
11月24日のK―BOOKフェスティバルでは、『フィフティ・ピープル』などで知られる作家のチョン・セランさんと対談した。「私の小説を読んだ後、現実から逃げ出すのではなく、この世界はよりよい場所に変えられるのだ、という勇気を受け取ってほしい」と語った。
著者の美しく繊細な言葉やイメージが味わえる『すべての、白いものたちの』(斎藤真理子訳)は、版元の河出書房新社によると、受賞決定後に文庫が9万部、単行本は1万部を重版し、合わせて累計約12万部となった。小説『回復する人間』(同)や『別れを告げない』(同)を出版する白水社も、「注文がひっきりなしに続き、増刷で追い掛ける状況」だという。
今回の受賞について、作家の平野啓一郎さんは、「作品の質と最近の海外の評価の高まりを考えれば、取るのは時間の問題だと思っていた。こんなに早くとは思っていなかったけれど、受賞にふさわしい人が選ばれたと思う」と語る。
そのうえで、文学性について「ハン・ガンさんは散文や詩を書いているし、傷ついた人間に対する描き方が繊細で詩的。物語の構成も独創的。韓国の民主化闘争のトラウマという、日本の小説家が持ち得なかった深刻な主題があり、後の世代として、それと正面から向き合っている」と評価する。