好調スズキ「1人勝ち」の理由とは?トヨタ・日産が低迷でも関係なし…強さの秘密とは
2024年の終わりも見えた11月、自動車メーカー各社から第2四半期決算が発表され、2025年3月期見通しの修正も行われました。それらの内容を見ると、9000人のリストラを明らかにした日産を筆頭に、販売台数の下方修正など、どれもパッとしないものばかり。王者トヨタでさえ、販売台数の見通しを前年よりも落とすという状況にあります。そうした中で、絶好調なのがスズキです。本記事では、「スズキ1人勝ち」の理由に迫ります。 【詳細な図や写真】営業利益の伸びから…スズキの好調ぶりが見えてくる(Photo:Berdaatadise/Shutterstock.com)
営業利益から見えてくる…スズキの好調ぶり
スズキに関しては、「年間の販売台数見通しで、マイナス9000台」と懸念材料となる報道もありましたが、300万台以上を誇るスズキの年間販売台数から考えれば、9000台のマイナスの影響は誤差の範囲とも言えます。 それよりも、見通しとして示された数字に意味があります。それが年間販売台数324.4万台という数字です。これは、2023年度実績の316.8万台を上回る数字です。売上高や利益に関しても、「前回予想から上方修正」という景気の良いものでした。 ちなみに、スズキが春に発表した通期予想では「売上高・各利益とも過去最高を見込み」としています。つまり、今期のスズキは過去最高を狙えるほど絶好調と言えるのです。 そんなスズキの年間の売上目標は5兆6,000億円、営業利益5,500億円。年間330万台を超える世界販売を達成した2018年の売上は3兆8,715億円、そこから2022年には売上4兆6,416億円(300.0万台)、2023年に5兆3,742億円(316.8万台)と着実に成長してきているのです。 それでは、スズキの好調さの理由はどこにあるのでしょうか。
なぜ、スズキだけが「1人勝ち」? その理由とは
そもそもスズキの事業には四輪事業(クルマ)に加えて、二輪車事業(バイクなど)とマリン事業(ボートや船外機など)があります。 ただし、四輪事業の年間売上約5兆円に対して、二輪事業は4,000億円程度、マリン事業は1,000億円程度しかありません。二輪事業とマリン事業を合わせても、四輪事業の1/10という規模感です。そのため、スズキの好不調を判断する上で、四輪事業の成績(販売台数などの状況)が大きな比重を占めることになります。 そんなスズキの四輪事業の最大の特徴は、主戦場とする市場が、他の自動車メーカーと大きく異なる点にあります。今、世界で最も大きな市場は中国であり、その次は北米となります。ほとんどの自動車メーカーは、その2つの市場で大きな利益を得ているような構造にあります。ところがスズキは、中国や北米市場では戦わない、という戦略をとっています。 スズキが注力している市場はどこかと言えば、インド、日本、欧州、アジア(インドを除く)、そして中南米やアフリカを含む、その他エリアとなります。 その配分としては、2023年度の実績から言うと、世界販売約316.8万台のうち、インドが179.4万台、続いて日本の67.4万台、欧州の23.6万台、その他エリアが28.6万台、そして最後にアジア(インドを除く)が17.8万台です。 インドだけで、日本市場の2.5倍以上も売っているのです。スズキの世界販売316.8万台の約57%を、インド市場が占めているのです。このような配分の自動車メーカーは他に存在しません。 ビジネスを行う場所が違えば、当然、市場ごとの経済状況の変化における業績の影響も異なるものとなります。今、多くの自動車メーカーが不調なのは、低調な中国の経済状況が理由となります。ところが、スズキは中国でクルマを売っていませんから、当然、その悪影響がないというわけです。 では、直近の各市場(インド、日本、欧州)におけるスズキの販売状況は、どうなっているのでしょうか。