瀬戸康史が英国の二人芝居に挑戦!堤真一とともに難解な台詞を紐解き人々の心模様を描く
2023年には初めての二人芝居となった『笑の大学』で内野聖陽との演技が高く評価された瀬戸康史。今回は英国の劇作家キャリル・チャーチルの『A Number―数』で、堤真一との初共演を果たす。2度目の二人芝居に瀬戸は何を見出すのだろうか 瀬戸康史さんの写真をもっと見る
心が躍る二つの“初めて”
人間のクローンを作ることができるようになった近未来という設定で、秘密を抱えている父とクローンであることを知った息子を描いた戯曲『A Number―数』。この親子を堤真一と瀬戸康史が演じることには、いやが上にも期待が高まる。瀬戸は7月上旬に行われた取材で、この二人芝居の相手役である堤真一と初対面したのだが、どういう印象を持ったのだろうか。 瀬戸康史(以下、瀬戸) 堤さんが出演されていたドラマ『やまとなでしこ』は再放送で何度も拝見していて、コメディからシリアスまでいろいろな表現ができる方だと思っていました。そして誰かに見せようとするお芝居ではなく、本当にそこにいる人をしっかり演じる方だというイメージだったので、今回ご一緒できてすごく嬉しいです。堤さんとは今日初めてお会いしたのですが、まず「スーパーで君の姿を見たよ」とおっしゃってくれて。こちらの緊張をほぐすようなきっかけを作ってくださるすごく気さくな方でよかったです。話しかけやすい空気を作ってくださるので、稽古ではいろいろとご相談できそうです。 そして2度目の二人芝居は楽しみでしかないですね! 『笑の大学』に出演する前は、舞台作品は人数が減るほど難しいだろうと思っていて、二人だけでその場をどうやって成立させればいいのだろうか、そんな力が自分にあるだろうかというマイナスなイメージしか湧かなかったんです。しかし内野(聖陽)さんや三谷(幸喜)さんのおかげでなんとか成立させることができ、多くの方にも見ていただけましたし、二人芝居の難しさと面白さも知ることができました。だから今回二人芝居のオファーをいただいて、やってみたいと思いました。 そして瀬戸にとってのもう一つの“初”が、海外の演出家との作品づくりだ。その演出家はジョナサン・マンビィ。これには、どのような思いで臨むのかを聞いた。 瀬戸 実は7年前に開催されたジョナサンさんのワークショップに参加させていただいた経験がありまして、その時はある戯曲を30人ほどの役者さんたちと楽しく演じさせていただきました。いろいろな意見を交わし合っているみんなの意見を尊重してくれるのですが、その時のことが印象的で、いつかジョナサンさんとご一緒したいと思っていたところに、今回お声をかけていただきました。 僕は海外の演出家の方との稽古自体が初めてなので、通訳の方を介するのはワークショップと同じですが、実際に作品を創り上げるのはそれとは違う気がしていて、ドキドキしている部分もあります。今回の『A Number―数』で僕がクローン人間も含め3役を演じることについて、先日、ジョナサンさんと話す機会があったのですが、彼はイギリスの「階級制度」のことを話してくれました。イギリスでは、その人が話す言葉で、どのくらいの階級の人物なのかが即座にわかるそうです。それを日本に置き換えるとどうなるのか。方言でしゃべったところで、その人の階級がわかるわけではないし、それをどう表現したらいいのか、どうすれば伝わるのか、答えが出ないまま終わったのですが、今のところ全くわかっていないことがたくさんあります。ジョナサンさんから「一緒に考えていこう」とおっしゃっていただいたので、二人で話し合いながら、作者が伝えたいことを読み取って見逃したくないですね。難しい作業ではありますが、日本で生活してきた僕たちが自分の中で変換しながら演じることで、言葉ではなく、お芝居で伝えることができるのではないかと思っています。