瀬戸康史が英国の二人芝居に挑戦!堤真一とともに難解な台詞を紐解き人々の心模様を描く
見えずとも必ず訪れる最高の達成感
そして8月上旬、始まって間もない稽古場へ訪れる機会をいただいた。実際に台詞を発して、より鮮明になったことはあったのかと尋ねた。 瀬戸 昨日、ちょうど1場から5場までの、この台詞はどういう意味を持つのかということを紐解く作業をやっと終えました。そのおかげで発見できたことが、たくさんありました! 引き続き感じる難しさはありますが、理解ができることもあって、霞んでいた視界が少しだけ見えるようになってきた感じです。 さらに言えば、普通の台本とは全然違っていて、台詞を覚えるのがとても難しいです。まず、原作のキャリル・チャーチルという人がわかりやすい書き方をされないからなのです。翻訳もチャーチルさんの意図を尊重されているので、紐解く作業の際に当初の翻訳から少し調整しているところもあります。とはいえ、ほぼ変わっていないので僕らが本当に理解して発さないと伝わらないのではないのかなと。僕はオリジナルの人物とクローン人間2人の3役を演じるのですが、彼らは全くキャラクターが違います。しかし、演じる上では「全くの別人を演じるというよりは、遺伝子的にこの人たちは同じだということも感じられるほうがいい」とジョナサンさんに言われて、僕も同感しました。どこまで出せるのかはわかりませんが、それはすごいヒントをいただいたと思うので、大事にしたいと思います。 作品と向き合うことで充実している今、全く異なることをして夢中になれることはあるのだろうか。 瀬戸 今はないかもしれません。強いて言えば好きな音楽を聴きながら稽古場への往復で車を運転している時か、お茶碗を洗っている時くらいですね。僕が今やるべきなのは、この芝居に取り組むこと。本当は絵を描きたい気持ちもあるのですが、台詞を覚えなくてはということが頭をよぎると、大好きな絵を描くことを楽しめなくなってしまいます。おそらくこの作品が終わった時に“絶対にやってよかった”と思えるでしょうし、これだけ地味な作業をやっていると毎日頭がもまれているので、少なくとも作品や役に対してのアプローチの仕方は増えました。俳優としての考える能力がレベルアップしているのではないでしょうか(笑)。 苦労さえ楽しみに変えてしまう彼のポジティブなマインドには、元気をもらえる。 瀬戸康史(SETO KOJI) 福岡県出身。2005年俳優デビュー以降、ドラマ『海月姫』、舞台『マーキュリー・ファー』、映画『寝ても覚めても』などに出演し、幅広く活躍。近年ではドラマ『鎌倉殿の13人』『院内警察』『くるり~誰が私と恋をした?~』、映画『愛なのに』『違国日記』、舞台『笑の大学』など。9月13日に映画『スオミの話をしよう』が公開予定。 ヘアメイク/小林純子 スタイリスト/田村和之 BY SHION YAMASHITA