今年のアートどうだった?2023年のマイベスト・美術展。 苅田梨都子選
ドラマや本、美容からアート、さまざまなカルチャーで心ときめくトピックがあった2023年。2023年のマイベストを各分野に精通するみなさんに聞きました。 今年Hanako Webで連載『苅田梨都子の東京アート訪問記』をスタートしたファッションデザイナーの苅田梨都子さん。連載で訪れた展示のほかにも、「マイブームだった日本画やお茶関連の展覧会に行くことも多かったです」と、その時々の気持ちとリンクしている展覧会に足を運んだという苅田さんが選ぶ、『今年のベストアート』3選をご紹介。
苅田梨都子〈ritsuko karita〉 ファッションデザイナー 1993年岐阜県出身。4年前に自身のブランドを〈ritsuko karita〉としてリニューアル。現在は、映画サイト「ザ・シネマメンバーズ」Hanako Web「苅田梨都子の東京アート探訪記」でコラムを連載中。
【1】河本五郎『河本五郎―反骨の陶芸』
今年の4月から8月まで虎ノ門の菊池寛実記念 智美術館で開催されていた、陶磁器作家・河本五郎さんの回顧展です。この美術館に訪れるのは2回目だったのですが、お庭を眺めながら展覧会のことを思い出せるゆったりした空間も含め、とても印象的でした。 これまで見てきた陶器の展覧会は、ある程度用途が予想できる作品が多かったのですが、河本さんの作品は、「反骨の陶芸」というタイトルにもあるとおり、その独特な造形や細かな絵付などから、何かを訴えてくるような力強さや、近くで見てみないとわからない構造の繊細さを感じて。そのインパクトの強さから、私のなかの陶芸のイメージが塗り替えられました。 一度だけ陶芸体験をしたことがあるのですが、やっぱり普段やっている服作りと違ってなかなかうまくいかないんです。自分が表現したいものの着地点を考えながら作っても、その過程で操作するのがとても難しい。今年の夏、写真家と一緒に写真をコラージュしたテキスタイルを作ったのですが、私ひとりでは生まれなかったコミュニケーションやデザインが生まれたり、実際に着たら写真が見えなくなってしまったり、良くも悪くもコントロールできない部分がありました。河本さんはひとりで作品作りをしていたのかもしれないし、服とは手法がまったく違うけれど、あえてコントロールをしなかったり、予想外に起こったことが、プラスになったこともきっとあったんじゃないかなと想像しながら楽しみました。