60歳で定年退職して、70歳から年金を受給する場合、この間の10年間の生活費はどうすればよいでしょうか? ほかの人たちはどうやって生活しているのでしょうか?
最近は、65歳定年が広がっているようです。しかし実際には60歳で定年退職し、65歳まで雇用が延長されているケースもあるようです。 60歳で退職した場合、年金受給は本来であれば65歳からできますが、繰下げ受給で70歳から受け取る場合の生活費について考えてみます。 ▼定年退職時に、「1000万円」以上の貯蓄がある割合は日本でどれくらい?
現在の年金制度
老齢年金の基礎部分に当たる「老齢基礎年金」は、65歳から受け取ることができるようになります。 会社員の方など厚生年金に加入していた方は、原則として65歳から老齢厚生年金を受け取ることになります。 ただし、昭和34年4月2日から昭和36年4月1日までに生まれた男性、昭和39年4月2日から昭和41年4月1日までに生まれた女性は、64歳から「特別支給の報酬比例部分」として老齢厚生年金を受け取ることができます。昭和36年4月2日以降生まれの男性と昭和41年4月2日以降生まれの女性は、原則どおり65歳から老齢厚生年金を受け取ることになります。 なお、年金は必ず65歳から受け取らなくてはいけないわけではありません。60歳以降から75歳未満までの間の1ヶ月単位で、受け取る時期を選ぶこともできます。65歳に満たないうちに受け取ることを「繰上げ受給」、65歳以降に受け取ることを「繰下げ受給」といい、「繰上げ受給」では、1ヶ月繰り上げるごとに0.4%減額され、最大で24%減額されることになります。 「繰下げ受給」の場合は、1ヶ月ごとに0.7%が上乗せされ、最大84%増額されます。
70歳から繰下げ受給を考えるとき!
70歳から年金を繰下げ受給することを選んだ場合、当然、本来受け取ることができる65歳から70歳までの間は、年金を受け取ることができません。従って、この期間に他の収入がなければ無収入となります。 仮に勤めていた会社の定年退職が60歳で退職金もあれば、退職金とこれまでの貯蓄を取り崩して生活をしていくことも考えられます。総務省の「家計調査(家計収支編)2023年(令和5年)」によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の消費支出は25万959円、単身世帯では14万5430円となっています。単純にこの支出が60歳から10年続いたとすると、夫婦のみの世帯で約3000万円、単身では約1750万円が必要になります。ただし消費支出はあくまで平均なので、まず現在の自身の生活費がどれくらい必要なのか、確認しておくことも大切です。 また気になるのが、70歳まで繰下げした場合の受給額です。例えば65歳から受け取る年金額が、老齢基礎年金と老齢厚生年金を合わせて18万円だとすると、繰下げ受給によって42%増やすことができるので、25万5600円となります。 さらに配偶者がいる場合は、配偶者の年金も合わせて考えると、老後の生活費として不足がなくなる可能性があります。