子どもの脳とやる気を育てる叱り方とは? モンテッソーリ教育で「ダメ」「違う」がNGな理由
結果ではなく努力やプロセスに目を向ける
ほめるときの声かけと同様、叱るときも「人中心」の批判を避けて、過程(プロセス)を中心に声をかけることが重要です。人中心の批判とは、子どもの性格、能力、あるいは外見の欠点や短所を責める叱り方のことです。 一方で、過程や手法中心の声かけとは、結果に至るまでの努力(あるいは努力の足りなさ)ややり方(あるいはやり方の未熟さ)に対してネガティブな評価なしに具体的にフィードバックを与えることです。 子どもは能力ややり方を否定されると、自分には力が足りないからどうせできないという無力感(helplessnessresponse)を覚えるようになり、次は成功しようという意欲をなくしてしまいがちです[*22]。 たとえば子どもがテストで40点をとってきたとします。「40点しかとれないなんて、ひどいわね。頭が悪い!」と批難する代わりに、「40点だったのね。自分の目標には届かなかったみたいだね。次はどういうやり方をしたらもっと学べるようになるかな?」というような声かけをしてあげましょう。 *22 Kamins, M. L., & Dweck, C. S. (1999). Person versus process praise and criticism:Implications for contingent self-worth and coping. Developmental psychology, 35(3), 835-847.
好ましくない行動の理由を説明する
理由を説明するというのは、ほめるときに具体的に説明するのによく似ています。子どもに、自分がとった行動が、子ども自身あるいは他者にいかに影響を与えるかというモラル(道徳)に焦点を置きながら、具体的に説明することで、子どもの理解を得ようとする方法です[*23]。 罰を与える(叩くなど)、あるいは一方的な叱り方をした場合、子どもの意識はいかに罰を逃れるかということに向くため、自分の誤った行動を振り返る機会がありません。 一方で具体的な理由で説明された場合、自分の行動と結果の因果関係(例:お友達を叩いたら、お友達が泣いた)を初めて理解するようになるほか、他者への影響を指摘することで(例:叩かれたお友達は悲しかった)、相手を思いやる気もちが生まれるのです[*24]。 たとえば、子どもがスーパーで走りだしたとします。つい「危ない! ダメだよ!」と口走りそうですが、代わりに「走るとぶつかったりして、あなただけじゃなく、ほかの人もけがするかもしれないから、ここは一緒に歩こうね」というような声かけをしてあげましょう。 *23 Hoffman, M. L. (2001). Empathy and moral development: Implications for caring and justice. Cambridge University Press. *24 Choe, D. E., Olson, S. L., & Sameroff, A. J. (2013). The interplay of externalizing problems and physical and inductive discipline during childhood. Developmental psychology, 49(11), 2029.
島村華子