横浜流星の【5つの顔】はこうして生まれた 映画『正体』リアリティを支える職人たちの舞台裏
■藤井組スタイルを作り上げるキャラクターシート ──【5つの顔】を作っていく過程でどのような苦心、アイデアがあったか聞かせてください。土木作業員として働くベンゾーは、ボサボサ頭に無精ヒゲが特徴です。 皆川:ベンゾーがかけるメガネは分厚いレンズのものにしたいと藤井監督からお話がありました。レンズが厚いと奥に見える目が小さくなって、その人の印象が変わってくるからです。けれども実際、分厚いレンズにしたら度がものすごく強くなってしまい、そのメガネをかけた流星さんがまともに歩けなくなってしまって…。それを受けて、厚さは出しつつも度は強くならないように工夫をしました。 西田:判決が確定するまでは髪の毛の長さをキープしなければいけないという決まりがあるそうです。刑が確定してからは、その決まりもなくなるので、死刑判決が下されてからベンゾーになるまでの期間を逆算して、肩にかかる程度の長さになりました。最初はボブに近いスタイルで考えていたんですが、短い髪から伸ばしてもボブにはならないだろうということで、カツラ担当の方と相談して決まったのがあの長さだったんです。また、質感もいろいろと考えました。きっと洗えていなくてサラサラヘアではないはず。ということで、ウェーブがかかっているほうがいいだろうという結論に。また、あまりツルッとした肌感だとヒゲの質感と合わないだろうし、工事現場で働いているのでわざと汚したりもしました。そうやって、かなり細かく考えてやっていました。 ──ライターとして働く那須は、ベンゾーとはガラリと変わった印象になります。 皆川:藤井監督はキャラクターシートを細かく作るんです。那須に関しては「古着っぽくしたい」という要望があって。チェック柄のシャツというイメージは最初に聞いていましたが、なぜ那須がそういうスタイルなのか、その経緯や意図もそのシートに書いてあったのでイメージがしやすかったですね。 西田:那須も長さのある髪ではありますが、ベンゾーとは髪色が違います。これは、美容室ではなく自分でブリーチしたという設定なので、何回色を抜いたらこの色になるという色味のサンプルをいくつも監督に見せて確認しました。また、自分での染毛は根までしっかりきれいに染められないだろうと考え、根元はわざと暗さを入れています。