認知症による行方不明は過去最多に「認知症で要介護3の母のひとり歩き」問題への対処法【社会福祉士解説】
認知症による行方不明は過去最多に
厚労省によると、65才以上の高齢者の認知症発症率は、推計15%。2012年時点で約462万人でしたが、その数は2025年には730万人へ増加し、65才以上の5人に1人が認知症を発症するといわれています。 また、警察庁が発表した資料では、認知症やその疑いがあり「行方不明」になった人が全国で延べ1万8700人余りと過去最多となり、この10年でおよそ2倍に増えています。 この1万8700人余りという数字は、この人たちが見つかっていないという意味ではなく、行方不明届出の数です。届出がないものを含めればもっと多くの高齢者が認知症により行方不明になっていると予想できます。 なお、認知症による行方不明者は、受理当日に77.5%、1週間以内に99.6%が所在確認されており、行方不明者全体の中では、比較的早期に所在確認に至っています。 「9割以上が1週間以内に見つかる」という数字から、ひとまず安心と感じるかもしれませんが、2.6%にあたる491人は命を落としているというデータもありますので、絶対に助かるという保証はありません。 認知症のかたの中には、家を出たあと自分のいる場所や時間の感覚がなくなって道に迷い、途方もなく歩き続けてしまうケースが多く、夕方以降や早朝などの人通りの少ないときには、長時間に及ぶことがあります。 つまり、時間が経つほど遠くまで行ってしまうため、行方不明になる可能性や交通事故の不安もつきまといます。また、夏場は熱中症や脱水症状、冬は低体温症などの危険性も考えられます。 参考/厚生労働省「認知症の人の将来推計について」 警察庁・生活安全局人身安全・少年課「令和4年における行方不明者の状況」 警察庁「行方不明者数の推移」
認知症のひとり歩きの対策とは?
認知症によるひとり歩きは、事前に対策をすることである程度防げる場合があります。大きなポイントは4つあると考えています。
【1】地域の協力を仰ぐ
捜索をスムーズに進めるための取り組みとして、SOSネットワークがあります。 警察や地域団体の協力により速やかに行方不明者を見つけ出す仕組みのこと。「○○市 SOSネットワーク」と検索すると自身の自治体での取り組みが確認できます。 インターネット上で見つからないときは、自治体の高齢福祉課、介護保険課などに問い合わせをしてみてください。 SOSネットワークを利用するためには、事前の登録が必要です。65才以上、認知症であること、情報提供に同意などの条件がありますので、利用したいと思ったら事前に電話などで確認してみてください。